嫉妬から部下を地方に飛ばした男

次にご紹介するのは、システム系のメーカーでの事例です。

舞台となったのは、開発システムの検査を担当していた部署です。マネジャー、現場リーダー、部員という組織で、マネジャーが部員の仕事の割り振りをしていました。しかし、このマネジャーは、現場にはあまり顔を出さないため、実情がよくわかっていなかった。高い専門性が求められる業務であるにもかかわらず、スタッフのスキルや経験値を無視して「3年目だからこの業務」「ベテランだからこの担当」というふうに機械的な采配をしていたため、現場ではしばしば混乱が起きていたといいます。

そこで、部下からの陳情もあって、現場をよく把握するリーダーが、「スタッフの業務の割り振りを自分に任せてくれないか」とマネジャーに談判しました。「やりたいならどうぞ」と軽くOKしたマネジャーですが、その後、チームがみるみる業績を上げていくのを見ると、だんだんおもしろくない気持ちになったようです。1年ほどたった頃、リーダーはまったく畑違いの地方の部署へと異動となり、このチームの采配は再びマネジャーが行うことになりました。

社内会議をするビジネスマン
写真=iStock.com/kazuma seki
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「あいつを飛ばしたのは俺なんだ」

評価の高いチームを率いることになったマネジャーは得意満面で、こともあろうに「あいつを飛ばしたのは、実は俺なんだ」と吹聴。自分には、人事を自由にできる権力があるということを誇示したかったのかもしれません。このうわさはあっという間に社内外に広まり、まずはチームスタッフがマネジャーに反旗を翻すことになります。マネジャーの指示には従わず、現場は機能不全に陥りました。それを見た上層部は組織の大改革を断行しますが、業績は下降線をたどります。そして、リーダーの左遷事件から3年ほどで、ついには倒産してしまったのです。

マネジャーの嫉妬で実力のあるリーダーを左遷させたことが、巡り巡って会社の命まで奪ってしまった、そんなふうにも考えられる事例です。