肥満度は結婚相手の学歴や年収とトレードされている

「結婚を取引として捉え、その取引に自分のスペックが反映される」という考えについては、エクセター大学のソニア・オレフィス教授らの研究で実証されています(*3)

オレフィス教授らは、アメリカのデータを用い、調査対象者の肥満度(BMI)とその結婚相手の学歴や年収といったスペックの関係を分析しました。オレフィス教授らの狙いは、「BMIが高いほど、結婚相手のスペックは高くなるのか、それとも低くなるのか」という点を明らかにすることでした。

分析の結果、「BMIが高いと結婚相手の学歴や年収が低くなる」傾向があることがわかりました。この傾向は特に女性で顕著であり、夫の年収が4万ドル(約560万円)と8万ドル(約1120万円)を比較した場合、年収4万ドルの夫をもつ女性の方が5.4キロほど体重が重かったのです。

この結果は、結婚相手を探す際、BMIの大きさが相手の所得や学歴との交換条件として機能することを意味しています。高いBMIだと相手の学歴や年収が低くなる反面、BMIが健康的な水準だと相手の学歴や年収が高くなっていたのです。

BMIの計算式が書かれたノート
写真=iStock.com/designer491
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この結果は、結婚がある種の取引であり、自分のスペックと相手のスペックをトレードしているという考えを支持するものだといえるでしょう。

(*3)Oreffice, S., & Quintana-Domeque, C. (2010). Anthropometry and socioeconomics among couples: Evidence in the United States. Economics & Human Biology, 8(3), 373–384.

恋愛結婚が主流の現在、取引としての側面が顕在化

「結婚相手は自分を映す鏡」という考えには「自分と似た人と結婚している」と「結婚を取引として捉え、その取引に自分のスペックが反映される」という2つの解釈があるわけですが、どちらも納得できる部分があります。

おそらく、直面する社会状況によって2つの解釈のどちらがより適合するのかという点が変わっていくのだと考えられます。

そこで、現在の日本社会を例にとって考えてみたいと思います。

今の日本では恋愛結婚が主流であり(*4)、自分で相手を探す必要があります。ただし、結婚は重要な決断ですので、誰でもいいというわけにはいきません。通常、「最低でもこれはゆずれない」という相手に求める条件があると考えられます。

この相手に求める条件と自分のスペックを勘案して、結婚相手を探していきます。ここで自分の持つスペックと相手の持つスペックが取引され、うまくはまれば結婚が成立すると考えられます。

このように、恋愛結婚が主流の現在の日本では、結婚の取引としての側面が顕在化している可能性があります。

(*4)岩澤美帆・三田房美(2005). 職縁結婚の盛衰と未婚化の進展, 日本労働研究雑誌, 535, 16-28.