結婚相手はどのような要素で決まるのか。経済学の視点から女性の幸せを研究する拓殖大学准教授の佐藤一磨さんは「BMIの高さが相手の所得や学歴との交換条件として機能することを示す研究があります。恋愛結婚が主流の社会では結婚の『取引』としての側面が顕在化し、マッチングアプリなどの登場でそれがより強化されている可能性があります」という――。
新郎新婦がファーストダンス
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「結婚相手は自分を映す鏡」を経済学の視点で考える

筆者は「女性の幸せ」を経済学の視点から分析しているのですが、中でも結婚というライフイベントに大変興味を持っています。

この結婚に関連して、「結婚相手は自分を映す鏡」といわれることがあります。

自分の状態を反映した人が結婚相手になっているということを意味するのだと考えられますが、これには次の2つの解釈がありえます。

1つ目は、「自分と似た人と結婚している」という解釈です。いわゆる「似た者同士の夫婦」であり、バックグラウンドの近い人を結婚相手として選んでいると考えられます。

2つ目は、結婚をある種の取引として捉え、その取引に自分のスペック(学歴、年収、容姿、健康等の属性)が反映されるという解釈です。

この場合、結婚相手を選ぶ際に自分のスペックを取引材料として提示し、お互いに納得のいく取引の成立した人同士が結婚していると考えます。この際、自分のスペックに応じた人が結婚相手として選ばれるというわけです。つまり、もし高いスペックを持っていれば、好条件のパートナーとマッチングできていると考えられます。直接的に自分と似ているというよりも、自分の状態を暗に投影している意味で鏡の機能を果たしているという解釈です。

一見すると、「自分と似た人と結婚している」という1つ目の解釈の方がピンとくるのですが、実は後者の「結婚を取引として捉え、その取引に自分のスペックが反映される」という解釈を支持する証拠も確かに存在しています。

これらそれぞれの解釈について、以下で詳しく見ていきたいと思います。

カップルの類似性が高いほど社会階層が固定化される

「結婚したカップルがどの程度似ているのか」という問いについて、これまで社会学者、人口学者、経済学者が興味をもって分析してきました。

その理由は、似た者同士の結婚が多いほど、社会の流動性が低くなっている可能性があるためです。

例えば、所得水準の高い人同士や所得水準の低い人同士の結婚が多く発生する社会の場合、階層の固定化が進み、経済的な格差も改善されないままになってしまう恐れがあります。

逆に、違った属性の人たちが夫婦になることが多い場合、社会全体が流動的になり、階層の固定化が小さくなると考えられます。

このように社会の流動性を測るバロメーターの1つとして、結婚したカップルの類似性が用いられてきました。