日本おなじみの「チーム経営」から成果主義へ
成果主義は、日本でも1990年代から次第に導入され、私も社長時代に積極的に推し進めました。ところが、日本の企業文化にはなじまず、なかなか定着していきません。
日本の仕事のスタイルは、部単位、課単位のグループ主義であり、リーダーの下、チームプレーで力を発揮する「チーム経営」が主体だからです。
しかし、テレワークはそうした企業文化を突き崩していくでしょう。
テレワークがもたらす「個人の能力」と「仕事の目標」重視の新しい働き方
「あなたは仕事をするうえで何を得意としていますか」
「どういうことを目標としているのですか」
これからは就職や転職の際に、そういうところが問われるようになっていきます。
そうすると、どうなるか。
たとえば現在の大企業や官庁の部長、課長の多くは、転職の際に雇用側に相手にされなくなるかもしれません。
というのも、彼らの多くは自分が何を得意としているのかわからない、というか、特別に得意なものがないからです。
「私は全体を見ながら統轄、監督してきました」
「2年ごとに部署を異動して、それぞれの仕事の内容の大枠を把握しています」
そんな漠然とした能力は、テレワークやリモートワークが日常化したポストコロナ下では通用しません。
それぞれが得意な仕事の分野と、仕事の目標をはっきり持つ。みんな同じ初任給でいっせいに入社する採用方式に代わって、特殊な能力やスキルを持っていると、初任給に能力給が加算される――。
これが新しい仕事の考え方になるでしょう。
そこで初めて本当の成果主義が実現します。
それぞれの仕事内容が明確になると、同じ職務内容には同じ賃金が支払われるという、「働き方改革」の柱となる「同一労働同一賃金」というルールも現実味を帯びてきます。
これまでは、同じ部署にいても、働き方や時間、成果は人によって異なり、実態をはっきり把握することはできませんでした。たとえば、同じ営業職でも、1日中パソコンに向かっている人もいれば、ずっと外出している人もいます。「同一の労働」など現実には、日本の雇用形態ではほとんど机上の概念でした。
ところが、テレワークはそれを変える可能性を秘めています。
それが、コロナ禍がはからずも私たちにもたらした恩恵であり、その意味では新しい働き方の時代が到来する、と言えます。