まずは「ご褒美」や「締め切り」から始めよう

外的動機づけから、取り入れ的動機づけ、同一化的動機づけ、内発的動機づけと進んでいくほど自律性が高く、動機づけの効果や継続性も大きくなります。

はじめから「好きだからやる」というところに持っていくのは難しいので、まずはコントロールしやすい外的動機づけを活用し、「ご褒美をもらえるから」「締切があるから」という段階からはじめるのがよいでしょう。

外的動機づけによって一歩目を踏み出せたら、周囲の人と比較して「負けたくない」というところに意識を向けたり、その人の将来にとって、この課題をやることがどれだけ重要なのかを話したりして、だんだんと自分の内面に近いところにモチベーションを持ってもらい、自律性の高い動機づけに変化させていくことがポイントになります。

こういった自律性によるモチベーションの分類を理解することで、アンダーマイニング効果の注意点についても理解いただけたのではないでしょうか。せっかく外的動機づけよりも自律性の高い動機づけがされているのに、ご褒美を与えてしまうとモチベーションが外的動機づけに上書きされてしまい、やる気をなくす原因となってしまうのです。

(4)親が姿を見せる

山本五十六いそろくの有名な言葉に、「やって見せ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば人は動かじ」というものがあります。

この言葉で、自分でやって見せることが一番に来ているように、自分以外の人になにか影響を与えたいときは、まず自分がお手本にならないといけません。

自分自身の体験や他人からのフィードバックが動機づけやモチベーション形成にとても重要ではありますが、それだけでなく、周囲の人にほかの人が与えたフィードバックもモチベーションを形成する大きな要素になりえます。

誰かの発言が褒められていたら自分も発言したくなるし、ほかの人が怒られているのを見たら、自分は同じことをしないようにしようと思います。

家庭でも同じです。親が子どもに「毎日30分読書をしなさい」と言っているのに、親は時間があるときに読書しないでテレビばかり見ていると、心から推奨しているわけではないというメッセージとして子どもに伝わってしまいます。

子どもは周りの人間をよく見ているので、子どもに推奨していることと一貫性のある行動を親が取っていれば、心の底からそれをすることがよいことだと思って、自然とそのとおりにやろうというモチベーションが形成されます。