試験勉強をするとき、暗記のためにひたすら単語を書き写したことはないでしょうか。記憶のプラットフォーム 「Monoxer」を研究開発する畔柳圭佑さんは「残念ながら、見本を見ながら何度も写して練習するやり方は、効率よく記憶に残る方法ではありません」と言います――。

※本稿は、畔柳圭佑『記憶はスキル』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を加筆再編集したものです。

鉛筆は握りしめたまま、ノートにうつぶせになる少年
写真=iStock.com/fmajor
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「テスト」は成果を測るためだけにあらず

なにか学習をしたり覚えたりするときには、よくテストをしますよね。どれくらい覚えられたのか、理解したのかを測るために実施されるのがテストです。

でも、テストの効果はそれだけではありません。実は、テストをすること自体が、記憶を定着させることに一役買うのです。これはとても重要なことで、大きな効果を持つにもかかわらず、あまり認識されていないのではないでしょうか。

2011年にジェフリー・カーピック氏によって発表され、サイエンス誌に掲載された論文を紹介しましょう。

概念図をつくるより記憶に残る勉強法

【エビデンス】

この実験では、科学の文章を学習の対象として、4つの方法で学習したのち、1週間後にテストをおこないました。テストは、学習の対象であるもとの文章にそのまま載っているものを問う問題(グラフA)と推論が必要な問題(グラフB)があり、スコアを比較するとともに、学習後の学習者自身による評価(グラフC)も調査しています。

学習の方法は次の4通りです。

1.一定の期間で読むだけ
2.繰り返し読む
3.読む+概念図をつくる学習
4.読む+テストを受ける学習

結果は、テストによって学習をしたグループが、もとの文章にそのまま載っているものを問う問題、推論が必要な問題ともに高いスコアを獲得しました。正答率を比較すると、「繰り返し読む」、「概念図をつくる」といった学習をしたグループが40~50%だったのに対して、テストによって学習をしたグループは60~70%と大きな開きが出ました。

【図表】テストの効果
出典=『記憶はスキル

この4つの学習方法のなかでは、概念図をつくることが最も能動的な活動なので、効果が高い学習方法だと思った人が多いのではないでしょうか。しかし、結果はテストによって学習したグループが最も正答率が高いという意外なものでした。