「弁が立つ」「ソトヅラがよい」は“モラトーク”のせい
ほとんどの被害妻たちは、「夫は弁が立つ」「ソトヅラがよいのでモラ夫に見えない」と述べる。私は「私が担当した被害妻たちは、ほぼすべてがそう言います。ですが、本当に弁の立つモラ夫に出会ったことはないです。それに、ほとんどのモラ夫はモラ夫丸出しです」と説明する。
それでも被害妻たちは、「自分の夫は違う」「特別に弁が立つ」と言い張る。私は今度こそ「弁の立つ」モラ夫や「ソトヅラのよい」モラ夫に出会えるかもしれないと、密かに期待する。しかし、ことごとくその期待は裏切られてきた。
では、なぜ被害妻たちは「夫は弁が立つ」「ソトヅラがよい」と思うのだろうか。
実際、被害妻たちのほとんどはモラ夫と言い争いをしても勝てない。しかし、その理由は彼の弁が立つからではない。モラトーク(=モラ夫の話法)にはルールがなく、言い負かすためにはどんなことでも言い立てるからである。一方で被害妻たちは、モラ夫から様々な制約を課せられており、有効な反撃ができない状態に置かれている。
以下、モラトークの典型例を見ていこう。
典型的な「モラトーク」
モラトーク・その① 相手の言い分を奪う
妻が「疲れた」と言うと、「俺も疲れている」「俺のほうが疲れている」と言い出して、妻の言い分を認めない。
モラトーク・その② 責任を押し付ける
「俺を怒らせるお前が悪い」などと言って、自分が怒ったことを妻に責任転嫁する。モラ度が進むと、夫が車を運転していて道に迷ったとき、妻にナビを頼んでいたわけでもないのに、「(道順をしっかり見ずに)ボケっとしていたお前が悪い」と突然責任を押し付けてきたりすることもある。
モラトーク・その③ 妻の努力不足を糾弾する
妻が家計費の不足を訴えると、「もっと安いスーパーを探せるだろ」などと言って、努力不足を糾弾する。冷蔵庫を点検して、しなびた野菜を見つけては、「これは何かな?」などと質問モラ(=嫌味な質問をして、殊更に妻の自責の念を刺激して、妻を貶めるモラ)を繰り出すこともある。
モラトーク・その④ 言ってもいないことを、勝手に付け足して反論する
外出時に「歩き疲れた」と言うと、「せっかく出かけたのに、楽しくないと言うのか」などと勝手に言い分を付け足して、それに対して反論し、怒る。
モラトーク・その⑤ いきなり言うな
被害妻が勇気を振り絞ってモラ夫に注文をつけると、モラ夫は、「そんなこと、いきなり言われてもわからない」と怒り出す。しかも、実際には決して「初めて」や「いきなり」でなかったとしても、モラ夫は「いきなり言われた」と言い立てることがある。
モラトーク・その⑥ 理解させないお前が悪い
モラ夫自身に都合の悪いことは、「意味がわからない」などと言って理解を拒絶する。そして、「理解させないお前が悪い」と責任を転嫁する。