暴力的になる「モラ末期」の夫

そして、モラ末期(=モラハラの程度が高じ、認知が著しく歪んだ状態)に達した夫は次のような状態になる。

① 不機嫌のかたまりになり、自宅でも無口になる。日々、妻を睨みつけたり、ガン無視したりする。
② 怒鳴る頻度が高くなり、いつでも不機嫌。
③ 妻への支配を強めるため、暴力的になる。壁を叩く、ドアを乱暴に閉める、物に当たるなどする。暴力を制御できず、妻に手を上げる者もいる。

こうなると、離婚していなくても、家庭は実質的には崩壊しており、夫婦間の精神的な絆も失われていることが多い。セックスレスになっている夫婦も多いが、モラ夫の攻撃に耐えきれず「不同意性交」を甘受している事例も多い。

家庭崩壊後のモラ夫と被害妻

以上、モラ結婚では、外見上、関係が維持されていても、実質的には家庭崩壊していることが多い。平和で幸福な家庭はもはや存在せず、妻にとって我慢の日々でしかない。

大貫憲介・榎本まみ『私、夫が嫌いです モラ夫バスターが教える“なぜかツライ”関係から抜け出す方法 』(日本法令)
大貫憲介・榎本まみ『私、夫が嫌いです モラ夫バスターが教える“なぜかツライ”関係から抜け出す方法』(日本法令)

ところが、モラ夫は被害妻の「我慢」に気づかず、「夫婦仲はよい」「幸福な家庭」などと思っていることも決して珍しくない。実際、妻から離婚案件の依頼を受けた弁護士が電話をすると、モラ夫は「別居の前日まで夫婦仲はよかった」「お前が離婚を煽ったのか」などと言い出す。

そして、夫婦関係が崩壊しても、別居し離婚を突きつけられても、多くのモラ夫は妻に執着する。離婚調停の場に至っても、「話し合えばわかる」「やり直せる」などと主張する。

他方で、子どもたちの学費負担を考えたり、この結婚を失敗にしたくない、自分から離婚を言い出すのが怖い、激しい非難や付きまといを受けるのでは等々の思いから、離婚に向けての初めの一歩を踏み出せない被害妻も多い。

大貫 憲介(おおぬき・けんすけ)
弁護士

1959年生まれ。1978年International School of Bangkok卒業。1982年に上智大学法学部法律学科卒業、1989年弁護士登録。1992年に独立し、さつき法律事務所を開設。外国人を当事者とする案件、離婚案件などを含む一般民事事件を中心に弁護士業務を行う。2015年ごろからTwitter(@SatsukiLaw)でモラ夫の生態についてツイートしている。2018年9月からは、4コマ漫画「モラ夫バスター」を週1本ペースで掲載。

榎本 まみ(えのもと・まみ)
漫画家

2012年文藝春秋より『督促OL修行日記』でデビュー。コールセンターで働きながら漫画やコラムの執筆を行っている。著書に『督促OL業務日誌』(メディアファクトリー)、『督促OLコールセンターお仕事ガイド』(リックテレコム)、『モラニゲ~モラハラ夫から逃げた妻たち』(飛鳥新社)など。