モラハラを重ねる夫=「モラ夫」たちは、なぜモラハラを重ねるのか。離婚案件を多く扱ってきた弁護士の大貫憲介さんは「離婚案件に登場するモラ夫たちは認知がゆがんでいて、自らの横暴さを認めないことが多い。そして、その言い分には共通点がある」という――。(第1回/全3回)

※本稿は、大貫憲介・榎本まみ『私、夫が嫌いです モラ夫バスターが教える“なぜかツライ”関係から抜け出す方法』(日本法令)の一部を再編集したものです。

“モラスイッチ”は、いつ入るのか

大貫憲介・榎本まみ『私、夫が嫌いです モラ夫バスターが教える“なぜかツライ”関係から抜け出す方法 』(日本法令)より(漫画=榎本まみ)
大貫憲介・榎本まみ『私、夫が嫌いです モラ夫バスターが教える“なぜかツライ”関係から抜け出す方法』(日本法令)より(漫画=榎本まみ)

離婚弁護士としての経験上、モラスイッチが入る時期として多いと感じるのは、「結婚」「同居開始」「挙式・新婚旅行」「妊娠・出産」「マイホームの取得」「就職・役職への昇進」などである。

ある被害妻は、新婚旅行の飛行機の中で、夫が「今日から俺が主人だ」と宣言し、横柄になったと証言した。別の妻は、挙式後、同居を開始したその日から、夫が命令するようになったという。

結婚しただけでスイッチが入るモラ夫がいる一方、昇進をきっかけにスイッチが入るモラ夫もいる。ある男性は50代目前に部長に昇進し、モラスイッチが入った。彼は私に対し、「男としての自信がつき、昇進以降、妻に対して横暴になってしまった」と告白した。

モラスイッチが入る時期は、それぞれの男性により違いがあるが、共通点もある。すなわち「一家のあるじ」「一人前の男」になったと本人が判断したときに、モラスイッチが入る。

モラ夫にとって、男が「結婚し、一人前になる」こと、「家長になる」こと、そして一人前の「威厳のある男として振る舞い、家長として妻子を指導、監督する」ことは、モラ夫たちがその人格の基礎に内在化させている社会的・文化的規範群(モラ文化)に照らして当然のことであり、そこに反省するべき点はない。モラ夫は、自らがモラ夫であることを「悪い」とはまったく考えていない。この視点に立つと、モラ夫たちの不可解な言動や意識が理解できる。すなわち、次のような言い分だ。