世帯分離は損得をトータルで考える

世帯分離は介護費用の削減にとても役立つ方法なのですが、欠点もあります。

まず、高額療養費制度や高額介護サービス費の「世帯合算」はできなくなります。

高額療養費制度や高額介護サービス費は、世帯ごとにかかった費用を合算して申請することができます。しかし同居していても、親と子で別の世帯になってしまいますので、合算はできなくなってしまうのです。とくに、2人以上介護している場合には、かえって損になる可能性があります。

したがって、世帯分離を検討する場合には、損得をトータルで考える必要があります。詳しくは、お住まいの自治体にご相談ください。

高齢者のシルエットイラストに家の屋根のように被せる手
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介護保険の「第1号被保険者」になったら?

日本では40歳になると介護保険に加入し、介護保険料を負担します。とはいえ、40歳から64歳までの間は、介護保険の「第2号被保険者」。第2号被保険者のうちは、保険料を支払っていても、介護保険による介護サービスを利用できるのは16の特定疾病に該当したときのみとなっています。

しかし、65歳からは介護保険の「第1号被保険者」です。第1号被保険者になると、各種介護サービスの対象となります。

介護サービスは、介護認定を受けることで利用できるようになります。市区町村の介護保険の担当窓口に介護認定の申請をすると、介護を受ける本人の状態が調査されます。そうして、要支援1・2、要介護1~5の7段階の要介護度が認定されます。

介護サービスの利用限度額は、要介護度に応じて決められます。要介護度が高いほど、利用限度額も高額になります。また、利用者の所得によって自己負担の割合が変わります。通常は1割負担ですが、所得が多い人は2割、3割負担となります。

介護サービスを利用し、1カ月の自己負担額が一定の上限額を超えた場合にその超えた部分が戻ってくる「高額介護サービス費」という制度もあります。上限額は住民税の課税される世帯(現役並み所得者がいる世帯)で14万100円、住民税非課税世帯で2万4600円となっています。高額療養費制度の医療費と同様に、介護費用の負担も一定の上限額までにできる、ありがたい制度といえます。