なぜ、ロングセラーになれたのか
近年、雪見だいふくをはじめ、各社が期間限定のアイスを次々と発売する理由を、「話題性のため」と見る向きもあります。
もちろんSNSが浸透した2012、13年以降、ツイッターやフェイスブック(FB)、インスタグラムなどを通じたアイスの口コミが急増したのは、確かでしょう。
「ロッテ 雪見だいふく」のツイッターが約28万人のフォロワーを獲得しただけでなく、「ハーゲンダッツジャパン」がインスタ(22年7月現在、フォロワー約27万人)などを通じて、また「ガリガリ君」(赤城乳業)がFB上のファンコミュニティーとも言える「ガリガリ部」(同メンバー約1.1万人)などを通じて、それぞれ新規性の創出や消費者とのコミュニケーションに努めてきました。
ですが「話題性」だけでは、雪見だいふくが40年以上にも及ぶロングセラーで居続けることはできなかったはずです。
触感や味わいを厳しくチェックする専門家集団の存在
ロッテが長年こだわってきたのは、餅の柔らかさや、商品全体の味わい、そして食感です。餅だけでも、繰り返し「見えないバージョンアップ」を図ってきたとのこと。季節限定商品も、奇をてらわず“幸せ”を感じられる味や食感を追求してきたといいます。
「近年、とくに開発に苦慮したのが『雪見だいふく もちもちパンケーキ』(20年)。本来は温かくてふわふわのパンケーキの食感を、餅でどう表現するか。社内のパネリストも、大いに迷ったようです」(大塚さん)
パネリストとは、ロッテの社内で商品開発にあたり、食感や味わいなどをチェック、助言する専門家集団。たび重なる訓練を経て菓子全般を担当するため、社内でも引っ張りだこだといいます。
先の「桔梗信玄餅」(山梨銘菓)とのコラボバージョンでは、コロナ禍で外出しにくい状況が続くなか、せめて雪見だいふくを食べて、旅気分やふるさとの味を楽しんでもらいたいとの思いを込めたそう。
「買った方々が、口々に『また山梨に行きたい』や『久々に、懐かしい(桔梗信玄餅の)味を思い出した』などと言ってくださった。きなこの風味と濃厚な黒蜜の再現には苦慮しましたが、今後もさまざまなコラボを通じて、全国の銘菓を多くの方々に知っていただきたいと考えます」(大塚さん)