発売15年のリニューアルで売り上げが下がる“大事件”

そのあとも、数々の難問が待ち構えていました。まずは競合の登場です。

当初、「冬にもアイス」の発想は新しく、まだ競争相手がほとんど存在しないブルーオーシャンだった。ところが発売から数年後には、他社がこぞって類似商品を発売するようになりました。

これに対しては「早々に特許を取得するなどして対応した」と大塚さん。

また90年代半ばには、ロッテの社内で「ある事件」が起こります。発売15周年(95年)に向けて商品をリニューアルすると、徐々に売り上げが下がり始めたのです。

「落ち込みの原因がパッケージにありそうだと気付いたのは、少したってからだったと聞いています」(大塚さん)

歴代担当者から受け継がれる「絶対やってはいけないこと」

具体的には、現在に近い丸く柔らかいフォルムから、四角っぽいフォルムへの変更。「店頭で目立たせたい」との思いがあったようですが、ロゴや配色はほぼ同じで、雪見だいふくのファンでなければ違いに気づかないかもしれない。

でも実際にヒアリングすると、「らしくない」などの声が続出したそうです。

15年目のリニューアルで登場した“四角い雪見だいふく”
15年目のリニューアルで登場した“四角い雪見だいふく”(写真提供=ロッテ)

「歴代の担当者からは、代々『この先、リニューアルする際も、絶対にパッケージは四角くするなよ』と言い継がれています」(大塚さん)

並行して、92年以降は定番に加え、さまざまな「季節限定」の商品を発売するようになりました。その数は、22年7月までに50種類以上。それだけアイスを取り巻く環境が大きく変化し、競合との争いも厳しくなってきたといいます。

考えられる理由の1つは、バブル経済の崩壊と“少子化”です。

アイスクリームの販売量がピークを迎えたのは、94年でした(日本アイスクリーム協会調べ)。この年が猛暑だったせいもあるとされますが、このとき、日本で団塊世代(現70代前半)に次いで人口が多い「団塊ジュニア」はすでに20歳前後。

いわゆる“子どものおやつ”としてのアイス需要が、少しずつ減り始めたのです。

また90年代半ば以降は、「健康志向」が強く叫ばれるようになりました。85年段階でアイスの2分の1以下だった“ヨーグルト”の支出金額は、「健康によさそう」を追い風に、2000年直前にアイスを逆転(総務省統計局ほか調べ)。以後、アイスには原料へのこだわりや味、食感などが、より求められるようになっていきました。