本当は優しい人なのかもしれない

実は、私がネットでひどい誹謗ひぼう中傷に遭っていた時も、修行のために比叡山にあがると言った時も、僧侶になって改名する時も、父は「そうか」以外に何も言いませんでした。その時は、「どうして父は私に無関心なんだろう」「どうしてこんなに冷たいんだろう」と思っていました。それは偏見で、本当はとても優しい人なのかもしれないと今では思います。

いま父は数カ月に1回、私の家に泊まりにきます。友達のような関係ではありませんが、昔に比べて随分けんも取れたと思います。先日はワクチンの話になり、「ファイザーを打ったの?」と聞くと、耳が遠くなった父が「んー、ぎょうざ?」と聞き返してきたので、笑ってしまいました。

こんなふうにして、人は愛すべき存在になっていくものなんですね。「ぼけるのは神様、仏様からの贈り物だ」と言われることがありますが、言い得て妙だなと思います。

親子関係は人間関係の基本のいろはです。年を取っていく親の姿を見て、「いずれ自分も行く道だ」と思えたとき、人は優しくなれます。