政権は白書の結果を重く受け止めている

野田聖子男女共同参画担当相は、白書の結果を踏まえた記者会見で、男女の出会いについては「一人で過ごす時間が多い人がどう人と出会えるのか」という課題について「イノベーション」が必要だと語りました。その中身が具体的に語られているわけではありませんが、行政がオンラインマッチングサービスを何らかのかたちで支援するような話になるとすれば、かなり踏み込んだ方策になります。いずれにしろ、今回の白書の結果は政権でそれなりに重く受け止められている可能性があります。

ただ、社会の重要な変化は、多くの場合複合的かつ把握が難しい要因のからみあいのなかで生じます。もしシンプルにひとつの要因で問題が生じているのなら、その問題はすでに解決に向かっているはずです。しかし実際にはそうではありません。未婚化も出生率低下も、そして今回取り上げた性行動の不活発化も、複雑な要因のからみあいのなかで現れてきた結果だと受け止めるべきです。

絡み合った要因を解きほぐすには、研究者の多くの時間と労力が必要です。「言い切ってしまう」ような言説に飛びつく前に、政府も、また私たち国民も、このことを常に意識しておく必要があります。

構成=辻村洋子

筒井 淳也(つつい・じゅんや)
立命館大学教授

1970年福岡県生まれ。93年一橋大学社会学部卒業、99年同大学大学院社会学研究科博士後期課程満期退学。主な研究分野は家族社会学、ワーク・ライフ・バランス、計量社会学など。著書に『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』(光文社新書)『仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』(中公新書)などがある。