「選挙って、おじさんの運動会みたいなもの」

2人とも選挙活動に参加してみて、選挙が年配の男性たちだけで行われていることに、違和感を持ったという。

「選挙って、おじさんの運動会みたいなものじゃないですか。その中に若い子がいるだけで目立つ。例えば、旗を持つよう頼まれたり、前に立って話してと言われたりと、いろいろ任せてもらえるのは嬉しいんですが、その一方で『自分の“女性性”と“今の若さ”を消費されているな』とも感じました。特にウグイス嬢をやった時には、『声がかわいいから、すごく食いつきがいいよ』と言われて、モヤっとしながらやっていたんです」と大島さんは言う。

もっと女性の政治家がいれば、そんな選挙運動のやり方も変わるだろうし、今の女性たちが抱えている「生きづらさ」も減るのではないかという思いもある。

日本では、性教育や生理について語ることがタブー視されているのも、大島さんはおかしいと感じている。付き合っている彼に生理の話をしたら、「はしたない」と言われたこともあるそうだ。また、政治の話をすると「意識高い系」と言われることにも抵抗があり、「自分の名字について考えることが、なぜ『意識高い』ことになるのかと思う」と、夫婦別姓の議論について語る。

対立構造にしないためには「どっちもいるべき」

上智大学1年の大野緑さん(19)は、「政治に携わる人には当事者であってほしいし、当事者性のある政策を実現してほしい」と、このプロジェクトに参加した。

「ふるさと納税は数年で圧倒的に普及しましたよね。それと同じように、女性問題もジェンダーの不平等も、政府が本気の姿勢を見せてくれれば、数年でガラッと変わるはずなんです。だから私たちが、絶えずそれを要求していく姿勢を見せていくことが、大事だと思っています」という。

女性の問題は、男性の生きづらさにもつながっていて、若者の問題は高齢者の問題につながっていると大島さんは言う。

「対立構造にしないようにしていきたい。“若者対高齢者”、“女性対男性”みたいな構図ではなく、どっちも一緒に考えられる場所を作りたいと思っています。それにはやはり、どっちもその場所にいる必要がある」

彼女らは、被選挙権についても現在の衆議院25歳、参議院30歳から、18歳にするべきだと主張する。

「投票する権利があるなら、立候補する権利があってもいいのではないかと思います。政治を判断する、選ぶ能力があるというのなら、被選挙権と参政権が同じ年齢でもいいはず。そこがずれてるのはなぜだろうと思います」と大島さんは言う。オーストラリアやドイツなどは、選挙権も被選挙権も18歳だ。

今回の参議院選挙では、全候補者545人に占める女性の割合は33.2%となり、初めて3割を超えた。しかし、女性議員が増えるとは限らない。ジェンダー平等について知り、投票行動に反映させようという彼女たちの運動は、オーストラリアの女性たちのように選挙で実を結ぶのだろうか。

大門 小百合(だいもん・さゆり)
ジャーナリスト、元ジャパンタイムズ執行役員・論説委員

上智大学外国語学部卒業後、1991年ジャパンタイムズ入社。政治、経済担当の記者を経て、2006年より報道部長。2013年より執行役員。同10月には同社117年の歴史で女性として初めての編集最高責任者となる。2000年、ニーマン特別研究員として米・ハーバード大学でジャーナリズム、アメリカ政治を研究。2005年、キングファイサル研究所研究員としてサウジアラビアのリヤドに滞在し、現地の女性たちについて取材、研究する。著書に『The Japan Times報道デスク発グローバル社会を生きる女性のための情報力』(ジャパンタイムズ)、国際情勢解説者である田中宇との共著『ハーバード大学で語られる世界戦略』(光文社)など。