11億円もの寄付金で候補者を支援

このティール・インディペンデントの選挙キャンペーンを資金面で後押ししたのは、メルボルンのフィランソロピスト、サイモン・ホームズ・ア・コート率いるClimate 200という団体だ。3年前に発足したこの団体のホームページには、「私たちのビジョンは、気候変動対策や男女平等を推進する議員が過半数を占める連邦議会を実現することです」とある。とはいえ、この団体は政党ではないため、選挙運動をしたり、候補者を選んだり、政策に口を出したりはせず、「単にコミュニティーのキャンペーンに資金と支援を与えるだけ」と書かれている。

Climate 200は今回の選挙で、1万1000人から集めた1200万オーストラリアドル(約11億円)の寄付を23人の候補者に渡して支援した。そのうち10人の候補者が下院に当選し、1人が上院議員となったのである。

ちなみに、この女性たちがティール(青緑)と呼ばれているのは、彼女たちが主に、青を党のカラーとする自由党の支持者にアピールしていたということと、環境問題などのいわゆるグリーン政策を前面に掲げているからだという。

政党ではなく政策で選ぶ

ティール・インディペンデントのように女性候補者に資金援助をするわけではないが、日本でも、SNSなどを通じてジェンダー平等に積極的な女性議員を増やそうと呼びかけるキャンペーンが行われている。この「女性に投票チャレンジ」を中心となって動かしているのが、市民団体「みらい子育て全国ネットワーク」代表の天野妙さんだ。

実は、特定の政策を取り上げて投票行動を促す運動は、昨年10月の衆議院選挙でも見られた。サイボウズの青野慶久社長らが展開した、選択的夫婦別姓や同性婚の実現に後ろ向きな政治家を選挙でヤシノミのように落とそうという「ヤシノミ作戦 」だ。

この時は、小選挙区で約半数の「ヤシノミ候補」が敗北したが、うち4割が比例代表で復活当選した。選択的夫婦別姓と同性婚に賛成していない自民党の候補に限ると、落選したのは1割程度にとどまり、青野氏も「あまり落とせなかった」とメディアの取材に語っていた。青野氏らは、今回の参議院選挙でも「ヤシノミ作戦」を実施している。

「女性に投票チャレンジ」で天野さんたちが行っているのは、参議院選挙の仕組みを、もっと多くの有権者の選択が反映できるように活用することで、ジェンダー平等の政策を進めようとするものだ。