今後、異を唱える動きが各地で出てきてもおかしくない

仮に保護者の意思に沿った組織であるなら、なぜ日Pは国に、子どもの人権を守るため、「子どもの権利条約」を教育現場にきちんと反映させるよう働きかけていかないのだろう。長年の素朴な疑問ではあったが、そのような下からの上へと至る動きは一切、なされたことはなかった。

PTA創設に文部省が積極的だったのは、戦前の「母の会」を想定していた側面もあるという。「母の会」は子どもが国のために戦地で死ぬことを誇りに思う、国が理想とする母の組織だ。日Pに「国のため」という流れがわずかでもあるのなら、その縦の系列は断ち切るべきものではないだろうか。

子どもの「健全な育ち」のために保護者組織が必要なら、国につながっている必要はない。あくまで“子どもファースト”で、子どもの目線に立った、学校独自の保護者と教員の会でいいのではないか。都小Pが脱退の理由に挙げた「会員の声を吸い上げる」仕組みのない日Pに対し、今後、異を唱える動きが各地で出てきてもおかしくない。多くの保護者が語る「子どものためならば」という思いから、日Pはあまりに遠く、かけ離れている。

黒川 祥子(くろかわ・しょうこ)
ノンフィクション作家

福島県生まれ。ノンフィクション作家。東京女子大卒。2013年、『誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち』(集英社)で、第11 回開高健ノンフィクション賞を受賞。このほか『8050問題 中高年ひきこもり、7つの家族の再生物語』(集英社)、『県立!再チャレンジ高校』(講談社現代新書)、『シングルマザー、その後』(集英社新書)などがある。