ヨーロッパでジェンダーニュートラルな玩具が選ばれる理由

最近のヨーロッパでは、子供になるべくジェンダーフリーの玩具を与えようという動きがあります。「男の子はブルー」「女の子はピンク」という昔ながらの価値観から離れ、ホワイト、グレー、ベージュなどの色を中心にしたニュートラルなコンセプトの玩具が数多く販売されています。

木製おもちゃ
写真=iStock.com/klaptoman
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まず子供たちにジェンダーニュートラルな玩具を与え、そのうえで、もし女の子がピンクのものをほしがったり、男の子がブルーのものをほしがる場合、それはまわりの大人によって否定されるべきではない――最近のドイツではこのように考えられています。

ジェンダーニュートラルな玩具を与えてきたのに、女の子がお人形さんで遊ぶことを好んだり、男の子が自動車の玩具を好んでも、大人はそれを見守るべきだとしています。

玩具を与えるときに、最初から「女の子にはお人形さんを」「女の子はピンクのものを」「男の子には自動車の玩具を」「男の子にはブルーのものを」としてしまうと、子供たちの中に「女の子はこうでなければいけない」「男の子はこうでなければいけない」という価値観が固定化されてしまいます。

せめて最初に親や教育関係者が用意する玩具はジェンダーニュートラルなものにして、そのあとは子供に自由に選ばせるという柔軟な教育をしている家庭が多いのです。

「シンデレラは仕事を頑張ったから王子様と結婚できた」

女の子に対して、「男の子に選んでもらう」ようになるのではなく「自主性を持ってもらう」ために、最近のヨーロッパでは昔ながらの童話をアレンジして子供に語る親もいます。

知人のチューリッヒ在住のスイス人夫婦は『シンデレラ』を読み聞かせる際、「シンデレラの足のサイズが靴とピッタリ合ったから、シンデレラは王子様と結婚できました」の部分を親の判断で変え、娘にこう読み聞かせています。

「シンデレラは仕事をがんばりました。そして、仕事を通じて知り合った王子様と仲良くなり結婚しました」

スイス人夫婦いわく、「靴がピッタリ合うことで王子様に見そめられるというストーリー展開は、女の子の教育上よくない。娘には活動的であってほしいし、高い自己肯定感を持ってほしい」とのことでした。

このスイス人夫婦に対して、「そこまでするのか」と思う日本人もいるでしょう。

でも、子供時代の刷り込みは意外と人生を左右するものです。4~5歳の女の子が「お花屋さんになりたい」と言うとまわりの大人は喜び、「弁護士になりたい」「宇宙飛行士になりたい」と言うと「それじゃ結婚できないよ」などと反論するようでは、固定した価値観が子供に刷り込まれてしまい、成長したときに無意識のうちに“古風な道”を選んでしまうかもしれません。