「古風な生き方」を多様性と認めると、本当の多様性を妨害する

ヨーロッパでいう「多様性を認めること」は、LGBTQへの理解を深めたり、これまで女性が就いてこなかった職業に女性が就きやすくなったり、今までしてこなかったものを積極的に進めることを指します。

サンドラ・ヘフェリン『ほんとうの多様性についての話をしよう』(旬報社)
サンドラ・ヘフェリン『ほんとうの多様性についての話をしよう』(旬報社)

これに対して日本には「昔ながらのシステムのもと、古風な生き方をする女性も多様性の一部」という考え方があります。これが日本とヨーロッパの圧倒的な違いだと私は感じます。

日本では多様性は大事としながらも、「力仕事が男性にしかできないように、産むことは女性にしかできない」「女性は女らしさを、男性は男らしさを大切にするべき」という旨の発言をよく聞きます。

でも、従来の古風な生き方を多様な生き方の一つと見なしてしまうと、結局は、多くの人が保守的な生き方を守ることに固執してしまい、多様性のある社会への変化を妨げることになるのではないでしょうか。

サンドラ・ヘフェリン(Sandra Haefelin)
著述家・コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフ」にまつわる問題に興味を持ち、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に『体育会系 日本を蝕む病』(光文社新書)、『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』(中央公論新社)、『ほんとうの多様性についての話をしよう』(旬報社)など。新刊に『ドイツの女性はヒールを履かない~無理しない、ストレスから自由になる生き方』(自由国民社)がある。 ホームページ「ハーフを考えよう!