下着について他人が言及してもいいことになってしまう

学校側が下着にまつわるルールを設けていることの弊害は「生徒が不自由な思いをする」ことだけではありません。

カラフルで 4 つの大きな物干しロープ
写真=iStock.com/Metaphortography
※写真はイメージです

一番の問題だと思うのは、子供たちが長年の学校生活の間で「下着などの女性のもっともパーソナルなことについて、他人が言及しても仕方ない」と思わせてしまうことです。

日本では大人の女性に対しても、下着について指摘する人がいます。

私もブラウスから少しブラジャーのひもが出ていたときに「ひもが見えているよ」と指摘されたことがあります。「ブラジャーのひもを出しているのって、わざと?」と質問され戸惑ったことも。なぜ戸惑ったのかというと、私が育ったドイツでは、他人がどんな下着をつけていようと、そのことには言及しないのが普通でありマナーだからです。

日本のいたるところで下着に意識が行き過ぎている

ドイツを含むヨーロッパでは、女性の下着の柄が服越しに透けていたり、肩からブラジャーのひもが見えていても、男性は「スルー」することがマナーだとされています。ちなみにドイツの学校に校則はなく、当然ながら下着にまつわるルールもありません。

サンドラ・ヘフェリン『ほんとうの多様性についての話をしよう』(旬報社)
サンドラ・ヘフェリン『ほんとうの多様性についての話をしよう』(旬報社)

日本の場合、小学校や中学校によっては下着に関する厳格なルールがあります。社会人になってからも、会社によっては「制服から透ける色の下着はダメ」などのルールがあったり、暗黙の規定がある会社もあります。

また、下着の盗撮や下着泥棒など下着にまつわる犯罪も目立ちます。日本のいたるところで下着に意識が行き過ぎている気がするのです。

中学校の校則には、あらためるべきものがたくさんありますが、校則を盾に実質的に生徒の下着について言及してもよいことになっている点がとくに問題だと思います。

おかしなルールの背景には、間違った前提や「こうした立場の人には、こうあってほしい」といった、ルールを作る側の勝手な願望や押しつけがあることをもっと意識してもよいのではないでしょうか。

サンドラ・ヘフェリン(Sandra Haefelin)
著述家・コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフ」にまつわる問題に興味を持ち、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に『体育会系 日本を蝕む病』(光文社新書)、『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』(中央公論新社)、『ほんとうの多様性についての話をしよう』(旬報社)など。新刊に『ドイツの女性はヒールを履かない~無理しない、ストレスから自由になる生き方』(自由国民社)がある。 ホームページ「ハーフを考えよう!