GAFAMが壊す民主主義

【斎藤】ところが、そのGAFAMの怖さが日本ではなかなか共有されていません。いまだに、インターネット誕生当時の、明るいイメージを抱いている人がほとんどでしょう。個人がいつでも、どこでもあらゆる情報を無料で入手でき、世界はフラットになり、民主主義が広まっていく、という。

しかし、現実はそれから程遠い。むしろ、日々の情報が一方的にユーザーから吸い上げられて、格差社会の下で世界は分断され、フェイクニュースが民主主義を危機に脅かすようになっている。

堤未果氏
撮影=増田岳二

【堤】インターネットが登場したときのその理想と同じものを、GAFAMは今も企業理念として掲げていますよ。ではなぜ、現実はそうなっていないのか? それは、テクノロジーそのものを、どうみるかということに関係があるでしょう。

かつて英国のSF作家アーサー・C・クラークは、「技術とは、あるポイントを超えると、魔法と区別がつかなくなる」と言いました。つまり、新しい技術が民主主義を広げてくれるわけじゃない、誰がその情報を持ち、どんな思想を入れるのか? という初期設定によって、現れる世界は180度変わってしまうんです。

中国のような国民統制が簡単に

【堤】日々吸い上げられる私たちのデータがどう使われるかという設定に関する情報はGAFAMのようなビッグテック上層部だけが持っている。企業秘密というベールに隠れている以上、こちら側にとってはクラークの言葉通り「魔法と同じ」レベルです。

リーマンショックの時の金融工学や、新薬や核開発や遺伝子分野と同じで、情報の非対称性があると、私たちはリスクを疑うより、受け入れてしまう傾向がありますから。

そしてデジタルの場合、蓄積されるデータが増えるほど精度が上がるので、より長時間オンラインにいさせて依存させるGAFAMのビジネスモデルが、この問題を一層ややこしくしています。

斎藤さんの言う「GAFAMの怖さが共有されない」という懸念は、日本だけじゃなく、まさに今多くの国が直面している問題ですね。国民が日常的にオンラインでいる時間が長くなれば、データを一元化して社会全体をデジタル化するニーズが出てくるけれど、そこで初期設定を誤ると、中国のように政府による国民統制も、簡単にできてしまいます。

【斎藤】欧米や日本は中国のようにならないと断言することはできません。だからこそ、タイトルにあえて「ファシズム」という強いワードを、警鐘のために持ってこられたのですね。