一週間に一度はこちらから声掛けを
そのためには、頻繁な声掛けが欠かせません。また、先ほど挙げた「所属感の薄さ」を補うためにも大切です。
オンラインでは欠けがちな雑談をこころがけて、相談しやすい雰囲気をつくることも重要です。そして「何か困っていることはない?」といった声掛けを、一人ひとりに対して最低でも週に1回は行うほうがいいでしょう。
ただ、そのときもこちらから掘り下げていくことが大切です。現在どんな仕事に取り組んでいるかを把握しておくのは大前提。そのうえで「先週頼んだ○○の件で困っていることはない?」など、ある程度具体的に質問したほうが、部下のほうも答えやすいでしょう。「何かない?」だけでは、大雑把すぎて「(ありすぎて)特にありません」となってしまいます。
「何かあれば、むこうから言ってくるだろう」という姿勢では、なかなかうまくいきません。こちらからすると「若手/部下から慕ってきてほしい」という気持ちもあるでしょうし、こちらから声をかけるのは、最初は勇気がいるかもしれません。しかし、接触頻度を増やすことが、つながりを太くします。最初は挨拶程度でもいいので、ぜひ頻繁に声掛けをするようにしてください。
つながりをつくり、孤立させない
モチベーションを維持するためには、やはり同期など、同じ悩みを抱えることの多い若手同士が、つながりを持てるような機会をつくるようにする必要があります。できれば、コロナの感染状況をよく見ながら、同期で共同作業をする機会を持つとよいでしょう。愚痴を言ったり悩みを相談したりするだけでなく、お互いの働く姿を見て刺激を受けられる場が必要です。ぜひ、つながりをつくり、孤立させないようにしてください。
もう1つ心がけてほしいのは、できるだけ働き方の選択肢を広げておくことです。オンライン授業やオンライン就活に慣れているコロナ禍の新人には特に、在宅勤務が可能かどうかが大きなポイントになります。オンラインばかりでも、人とのつながりが希薄になりがちなので危険ですが、働き方に自由度があることが、健康リスクを低減するうえでも安心感につながるようです。私が相談を受けた中でも「在宅勤務が許されない」という不満の声はよく聞きますし、ここで自由度がないと、「辞めたい」という方向に傾きやすいようです。
これまでも「今までの当たり前が通用しなくなっている」とは言われてきましたが、新人の育成についても同じです。自分たちが新入社員だったときを基準にして批判したり嘆いたりするのではなく、大きな環境変化のさなかなのですから、フラットに「昔とは違うんだな」と受け止めて対応してあげてください。
構成=池田純子
産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。