「満員電車ってしんどいですね」

そんな特徴を持つコロナ禍新入社員に、周りはどう対応していけばよいのでしょうか。

まず上司や先輩としては、コロナ禍入社の社員が先ほど挙げたような特徴を持ちやすいことを理解してほしいと思います。そして、こうした傾向を批判的に見るのではなく、どうしようもない環境変化によるものだと理解し、寄り添う姿勢で対応してください。

そのうえで、こうした若手の「不全感」を払拭し、信頼感を得るためにも、過剰に期待させるようなことはなるべく言わないよう気を付けたほうがいいでしょう。コロナ禍のこともあって、少し先であっても見通しが立ちにくい時代です。自分たちの若いときの経験をベースに「今後はこうなるよ」などと気軽に言わず、わからないものはわからないと正直に伝えるほうがよいでしょう。

逆に、丁寧に教えたりサポートしたりしてほしいのが「会社に入って直面する課題や大変さ」です。

最近、ある新入社員が「満員電車ってしんどいですね」と言っていたのが印象に残っています。私たちからしてみれば当たり前のことですが、確かに言われてみると、彼らはここ2年以上、ほとんどオンラインで学生生活を送ってきて、電車で通学することはありませんでした。

しかし入社すると、在宅勤務ばかりではなく出勤日もありますから当然、満員電車に乗ることもあります。「満員電車がしんどい」と言われて、「そんなこと当たり前じゃないか」とはねつけるのではなく、「確かに慣れないと大変だろうな」と寄り添う気持ちで接してほしいです。

アルバイト経験がない人も

また、大学生の時は学生同士の関係ばかりだったのが、社会人になると、上司や先輩、社外の取引先やクライアントとの関係ができて、そこに困難を感じるようになるのはこれまでの新入社員と同じですが、コロナ禍入社の社員は一層そこに難しさを感じやすくなります。なぜなら、学生時代にコロナ禍でアルバイトをする機会がないままで、初めて働き始める人が多いからです。そこが難しくて心が折れそうになるという悩みもよく耳にします。

自分たちにとっては当たり前のことが、若手にとってはそうではないということは、これまでにもあったと思います。コロナ禍入社の若手は、そのギャップがこれまでよりも大きい。ですから、こうした小さなことから大きなことまで、できるだけ予測される課題や大変さを伝えながら、一方で、彼らが直面した大変さを受け止めるようにしてください。

パンを焼く店員
写真=iStock.com/Koji_Ishii
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