日本では女性の幸福度が低下していない
アメリカでは女性の幸福度が低下傾向にあるわけですが、日本ではどうなのでしょうか。
この点に関する日本の研究を見ると、「女性の幸福度は低下していない」という結論を得ています。
例えば、2000年から2010年までの日本の男女の幸福度の推移を分析した国際医療福祉大学の光山奈保子准教授と国際協力機構緒方貞子平和開発研究所の清水谷諭上席研究員の研究は、「女性の幸福度が緩やかに上昇している」と指摘しています(*2)。これについては、以前の記事で詳しく論じました。
また、2003年から2018年までの日本の男女の幸福度の推移について分析した研究を見ると、「日本の女性の幸福度はこの間大きく変化していない」という結論を得ています(*3)。
2つの研究の結果に若干の違いはありますが、日本では2000年代以降、女性の幸福度が低下傾向にはないと言えるでしょう。
この結果はアメリカとは異なっています。おそらく、日米間で女性の幸福度のトレンドに違いがあると考えられます。
(*2)Mitsuyama, N., & Shimizutani, S. (2019). Male and Female Happiness in Japan during the 2000s: Trends During Era of Promotion of Active Participation by Women in Society. The Japanese Economic Review, 70(2), 189–209.
(*3)佐藤一磨(2022)「2000年代前半から2010年代後半にかけて女性の幸福度はどのように推移したのか」PDRC Discussion Paper Series, DP2022-001
日本では男性の幸福度が低下している
それでは次に日本の男性の幸福度はどのように推移したのでしょうか。
実は女性と違って、男性の幸福度は大きな変化を経験しています。
2003年から2018年までの期間の変化を分析すると、「明確な低下傾向」が確認されたのです(*3)。日本ではもともと男性の幸福度の平均値が女性よりも低いという傾向が確認されていましたが、男性の幸福度の低下によって、男女差が拡大しています。
実際に幸福度の男女差の経年変化を見たのが図表1です。この図では、年齢、学歴、世帯所得、家族構成といった個人属性の影響をコントロールしたうえで、幸福度の男女差の推移を見ています。
この図の見方はシンプルで、値が大きくなるほど幸福度の男女差が拡大することを示しています。
2003年を基準とすると、折れ線グラフは緩やかな右上がりとなっているため、幸福度の男女差がやや拡大傾向にあると言えるでしょう。