「介護離職」を避けるための制度・サービスとは
繰り返しになりますが、介護期間というのは予想ができません。思った以上に長くなり、費用がかかることがあります。そのため介護離職をしてしまうと、親子共倒れになることもあります。また介護が終わって自分が老後生活になったときに老後資金が足りなくなったり、年金の受給額が少なくなることもあります。
ですから、できれば介護離職というのは避けたいものです。とは言っても、親の介護は待ってはくれません。ではどうすればいいか。勤務先の仕事と介護の両立支援制度を利用して、働き方を少し変えながら介護サービスを利用することで、仕事と介護を両立させることをおすすめします。
仕事と介護を両立させる支援制度
仕事と介護の両立支援に関する制度はさまざまあります。たとえば、「介護休業給付金」は、対象家族1人につき3回を限度として、通算93日まで休みを所得することができます。その間の給付金は、給与の原則67%が支給されます。
長期間にわたる介護期間となると通算93日間ではとても足りないでしょう。しかし、この93日というのは、「介護の準備をする期間」として利用するものなのです。とても残念なのですが、約9割の人がこの介護休業の制度を利用していないのです。なかなか職場の雰囲気として休みが取りにくいというのもあるでしょう。
その他にも、両立支援制度の例を挙げると次のようなものがあります。
・介護休暇
・勤務時間の短縮などの措置
・法定時間外労働の制限
・深夜業の制限
A子さんのケースでは、就業時間の調整に関する制度を使ってフレックスタイムで働くことにしました。A子さんの母は、軽い認知症で要介護2です。通所介護と訪問介護を使い、できるだけ一人になる時間を少なくしています。A子さんの勤務時間は、通所介護の送迎時間に合わせるような働き方です。このように、ケアマネージャーと相談をしながら、仕事と介護が両立できるようなケアプランを作成してもらいました。
「地域包括支援センター」に相談をする
介護は、できるだけ自分1人で抱え込まないようにするのが大切です。まずは、市区町村に必ず1つはある「地域包括支援センター」に相談をしてください。介護が始まる前でも後でも大丈夫です。利用料は無料です。
地域包括支援センターとは、高齢者の介護・医療・福祉など総合的に支援してくれる相談窓口です。専門のスタッフが介護サービス、日常生活支援などの相談に応じてくれます。その他にも、市町村の役所には、相談の窓口があります。
介護の悩みを自分一人で抱え込まないでください。「こうしなければならない」という考えが自分を追い込んでしまうからです。介護の負担を軽くしてくれる情報やサービスを教えてくれる人、話を聞いてくれる人がいます。まずは相談をしてみてはいかがでしょうか。
介護はいつ始まるのかもわからないし、いつ終わるのかもわかりません。「介護を深刻に捉えすぎないこと」「我慢しないこと」が大切です。自分の人生や自分の老後生活のことも考えましょう。両立支援制度と介護保険制度などの支援・サービスの組み合わせにより、仕事を続けられるようなプランニングをしてみるのが大切なのです。
徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)、『とっくに50代 老後のお金どう作ればいいですか?』(青春出版社)、監修書には年度版シリーズ『NEW よい保険・悪い保険』(徳間書店)など多数。