総裁選出馬の4名は選択的夫婦別姓をどう考えたか

選択的夫婦別姓の話に戻ろう。自民党総裁選は、退陣を表明した菅義偉首相の次の首相を事実上、決める選挙とあって、「メディア・ジャック」と評されるほど、連日大きく報道された。選択的夫婦別姓問題も大きなテーマになったが、時間的な制約や紙面上の制約もあり、他の政策との比較でこの問題を丁寧に扱ったものは、残念ながらそんなに多くはない。その中で、総裁選告示日の2021年9月17日、日本テレビの報道番組『news zero』は、選択的夫婦別姓を比較的時間を割いて扱っていたので、それを見てみよう。

この番組に野田聖子氏、高市早苗氏、河野太郎氏、岸田文雄氏が出演。4人の候補者に「賛成」と「反対」の札を持たせて、政策ごとに賛否をまず尋ね、その後に詳しい説明を聞いていった。選択的夫婦別姓について、「賛成」と答えたのは、野田氏と河野太郎氏、「反対」と答えたのは高市氏で、岸田氏は「賛成」「反対」のどちらとも答えなかった。

高市氏は「反対」の説明の中で、総務相時代に住民基本台帳を見直して旧姓も併記できるようにするなど旧姓の「通称使用の拡大」のために全力を尽くし、その結果、住民票や運転免許証、パスポートなどで併記が認められるようになってきたという実績を強調し、これを広げていきたいとの考えを示した。

野田氏は「賛成」で、四半世紀前の法務省の法制審議会で選択的夫婦別姓が求められたことに触れ、「希望すれば同姓も名乗れる、別姓も名乗れる、そういう権利を国民に差し出そうということに何ら問題はない」と述べた。

同じく「賛成」の河野氏は、「社会的な要請があるが、議論がまとまらないものは、国会議員は決めるために選ばれているから、党議拘束を外して国会で議論し、本会議で採決すればいい」と提案した。

トーンダウンした岸田文雄氏

わかりにくかったのが岸田氏だった。「多様な生き方を尊重する、あるいは困っている方がおられるわけだから議論をすることは大事だ。ただ、夫婦の間はいいが、子どもの姓を一緒にするのかバラバラにするのか、いつ決めるのか、誰が決めるのか、十分理解できていない」と語った。

参院内閣委員会で答弁する岸田文雄首相=2022年4月28日午後、国会内
写真=時事通信フォト
参院内閣委員会で答弁する岸田文雄首相=2022年4月28日午後、国会内

岸田氏は、2021年3月に自民党の有志議員が設立した「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」の呼びかけ人の一人だ。だが、安倍晋三元首相ら自民党保守派に配慮する必要からか、総裁選では前述のような主張を繰り返し、明らかにトーンダウンした。