酒か、「たけのこの里」か
上の子が3歳の時、保育園の保護者の集まりで1人のママが「お迎え行って、帰ってきて夕飯作ろうって時、酒飲むよね?」と聞いてきました。私が「飲まないよ(下戸)」というと「ええ? じゃあどうやって夕飯作りのエンジンかけてるの?!」ってビックリするので「たけのこの里」と答えました。
冷蔵庫に入れて冷やしておいた「たけのこの里」を1箱いかないと無理でした。それでやっとやる気になった。当時の私は、「ストロングゼロ」とかと同じ効果を「たけのこの里」で補っていたと思います。
そうやって「たけのこの里」のおかげでようやっと、体重が標準を超えてでも保護者と社会人としてのメンツを保っている状態でした。
1人目の産後、2人目の産後で体重どんどんいっちゃってるけど、もうそういうのも気にできなかった。むしろ私の家事育児仕事を回す原動力が「食べる」にセッティングされちゃってるので、それをほかのことで代用するなんて難し過ぎでした。
子どもが10歳になり、つまり産後10年でやっと運動を楽しむことができて、それはある程度の時間の余裕ができたからで、「どうして今まで運動をサボってきたんだろう、もっと早くこの生活ができなかったんだろう」なんて全く思わないのです。
それよりむしろ、産後のボロボロの時に「産後半年で骨盤を戻さないと一生デブ」とか「産後ダイエットすることで10年後が違う」とか、さんざん言われたのなんだったんだろう、できるわけないじゃん、ひどいこと言ってくれるなよ、としか思わないんです。
10年後運動できるようになるから大丈夫
水泳のいいところは、高齢の女性たちがたくさんいることです。別にじーっと見るわけじゃないけど、視界に入る彼女たちの体に私はとても励まされます。
背中や腰が丸まっていたり、足をひきずっている人もいるし、30代や40代とは違う体つき。どの人も、それぞれの人生を送ってきたんだな、って感じがして。「骨盤締めないと、運動して痩せないと、体型は崩れていく、戻らない」って言われ続けてると、「老いる」がすごく怖くて避けなければいけないことって感じがしてくるけど、別にこわいことじゃないじゃん、自然なことじゃんって思えて気持ちがラクになるような。
運動しなきゃと思いつつできない、と自己嫌悪し追い詰められていた自分に「いまは仕方ないから、無理ならサボっていいから! 10年後運動できるようになるから! 巣立ちに間に合うからー‼」って言ってあげたい。
ライザップCMに登場する谷さん(46)は、5歳くらいの2人の子どもと抱き合っています。谷さんの本当の子どもなのかわかんないけど、40歳を超えて2人産んだのかもしれない、と思ったら産後5年くらいで体重を半分にする減量に成功したなんてすごすぎます。
CM画面の小さーい字で書いてある情報を読んだら「2年7カ月」で約50kgの減量に成功。ライザップの統計でもめったにないレベルだそう。
谷さんは本当にすごい! それは間違いないけど、産後のママたちに「追い詰められなくて大丈夫だからねー!」とも言いたい。それも間違いないのです。
1978年東京都生まれ。2001年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞(青林工藝舎)。母からの過干渉に悩み、その確執と葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)を2012年に刊行、ベストセラーとなる。ほかの主な著書に『キレる私をやめたい』(竹書房)、『お母さんみたいな母親にはなりたくないのに』(河出書房新社)、『しんどい母から逃げる!!』(小学館)などがある。