炎上・なりすまし・風評被害……SNSトラブルを回避する

不適切な投稿が火種となってあっという間に拡散・炎上してしまうのがSNSの怖いところ。予防策と対処法を決めて備えよう。

日本人の4人に1人がSNSトラブルを経験している
炎上は完全には防げないが予防と早期消火で備えよう

総務省の調査によると、日本人の4人に1人が何らかのSNSトラブルを経験しています。個人情報の流出や誹謗ひぼう中傷などさまざまですが、企業アカウントが気をつけたいのが、なりすましアカウントと炎上です。

「なりすましアカウント」とは、ユーザー名や投稿内容などを公式アカウントそっくりに装ったもの。フォロワーから個人情報を聞き出すトラブルがツイッターやインスタグラムで多発しています。本物の証しである認証バッジを取得して予防し、偽アカウントを探す巡回と、発見したらホームページで注意喚起をして、被害を食い止めましょう。

SNSを慎重に運用していても、炎上を100%防ぐのは難しいもの。社員のリテラシーを高め、投稿前に校正・校閲を行うことである程度防げますが、第三者による誤解やデマが拡散する「巻き込まれ炎上」も起こりえます。炎上には「予防」と「早期発見・早期消火」の2本立てで備えて。炎上してしまったら再発防止策をチームで共有し、ミスを繰り返さない仕組みづくりが大切。日頃からフォロワーと友好的な関係を築いておくと、炎上時にも味方になってくれる場合があります。

【STEP1】運用のルールを整えて炎上を予防

“炎上さしすせそ”と炎上危険日を回避

さ→災害・差別、し→思想・宗教、す→スパム・スポーツ・スキャンダル、せ→政治・セクシュアル(含むLGBTQ・ジェンダー)、そ→操作ミス(誤投稿)の投稿は炎上しやすいので注意。過去に災害などがあった炎上危険日(1/17、3/11、8/6、8/9、8/15 など)には無神経な投稿内容になっていないかも注意を。

投稿前にダブルチェック

公式アカウントの運用にはチーム体制とダブルチェック体制を導入しましょう。チームにはSNSのトレンドやリスクに詳しい人を加え、投稿案を作成した人と属性が離れている人によるダブルチェック(場合によってはトリプルチェック)を行い、不謹慎な内容でないか、誤字脱字がないかなどを確認しましょう。

OKとNGの境界をアップデートする

ここ数年、特に増えているのがジェンダー炎上。「以前は大丈夫だったから」という古い価値観は、思わぬ炎上を招きます。OKとNGの境界線は日々変わっていることを肝に銘じ、炎上事例を定期的に確認しましょう。危機管理意識を養うための研修なども活用して、社員全員のモラルやリテラシーを高めましょう。

【STEP2】炎上は早期発見・早期消火

モニタリング監視で炎上を発見、1次対応

炎上は放置している間に拡大し、手がつけられない状態になることも。自社名を検索する「エゴサーチ」や、モニタリングツールで炎上の火種を検知しましょう。見つけたら「炎上に気づいており現在対応中です」というメッセージをいち早く発信することが大切です。

炎上投稿は消さない。謝罪は適切に

炎上した投稿を黙って消すと、さらなる炎上を招きます。炎上のパターンに応じて対応ルールと対応フローを事前に決めておき、適切に対処しましょう。謝罪文をPDFや画像で出すと、「検索逃れ」と指摘されかねません。謝罪文は自社のホームページにテキストの形で掲載します。

ミスを社内で共有して再発を防止する

炎上につながる恐れのあるミスを発見したら、上司に報告するとともに、再発防止ミーティングを行うことをすすめます。当事者が詳細に報告し、改善ポイントをチーム全員で話し合います。「ミスの共有=仲間の役に立つ」という意識で行い、隠蔽いんぺいや報告の遅れを防ぎましょう。

実際にあった企業の炎上事例

行政がツイートした小冊子がジェンダー炎上

とある県の公式Twitterアカウントが「働く女性応援よくばりハンドブック」を紹介したところ、小冊子で家庭と仕事の両立を「よくばり」と表現されていることや、パパ(夫)も「配慮」の対象となっていることに対し、「仕事と育児の両立のどこがよくばり?」「時代錯誤」などと疑問の声が集まり炎上。従来の固定的な性別役割分担にとらわれた表現は炎上しやすく、配慮が必要。

巻き込まれ炎上で苦情殺到&売り上げ低下

焼肉店で悪ふざけをしていた動画を客自身がSNSに投稿。それを見たユーザーに「◯◯(店名)じゃね?」と臆測で書き込まれて炎上。名指しされた店は自身の店ではなかったため放置していたが、SNSで拡散されて苦情と売り上げ低下の被害を受けた。最終的に社長がテレビに出演して釈明する事態に。すぐに否定しておけば、被害は最小限に抑えられたはずで、初期対応の遅れが被害拡大を招いた。

SNS用語の基礎知識2

構成=中島夕子

後藤 真理恵(ごとう・まりえ)
一般社団法人SNSエキスパート協会代表理事

企業のSNSマーケティングを支援するコムニコに所属し、2016年よりSNSエキスパート協会代表理事。メディアでの寄稿や書籍、講演、検定講座を通してSNSマーケティングの正しい知識の啓発や業界の発展に努める。