3年前から書きたいと思っていたテーマ
──皇族の結婚が大きな話題になっている時期に、朝鮮王朝最後の王子に嫁ぐ皇女の物語を出されました。
【林真理子さん(以下、林)】3年前から書きたいと思っていたテーマで、狙ったわけではなかったのですが、タイムリーだったかもしれません。私は以前から皇室に大変興味を持っていて、1990年代に書いた『ミカドの淑女』など、過去にも皇族にまつわる小説を出していますが、そこからの流れで自然に今回の作品を書かせていただきました。
──朝鮮の王朝に嫁いだ本人である方子妃ではなく、あえてその母の梨本宮伊都子妃の目線で物語を進めていかれたのはなぜでしょう?
【林】彼女は、鍋島家の血が入っている皇族の女性ですが、新しいものをどんどん取り入れ、こっちがダメならすぐにあっちにいく。娘たちや親族を縁組みさせていくという自分の役割を大変よくわかっていて、そのうえで満州や朝鮮を訪れ、物事を判断する現場主義者でもあります。『梨本宮伊都子妃の日記』を読んで、この時代にこんなにも合理的で面白い女性がいたんだと感銘を受け、彼女の目線で描いてみたいと思いました。