起業のコツはまず動き、周囲の人をどんどん巻き込むこと
帰国後、2012年の6月に事業を開始。ケニア滞在中のご縁で、女性の雇用や地域のCSR活動にも積極的な農園主と出会い、そこから2500本のバラを輸入した。イベントで売ると評判は上々だったが、赤字を出した。
「生花の在庫を持つのはハイリスク、そこでオンラインショップで営業することにしました。注文と同時に代金をもらい、そのぶんだけ仕入れれば在庫も廃棄もありません。このビジネスモデルなら運転資金も最小限。無理しないスモールスタートが長続きのコツだと考えました」
自分の給料も取れないほどのローリターンだったが、ローコストも徹底し、広告宣伝費をかけない代わりにほぼ毎日、自ら多種多様な会合に参加してPR活動を展開した。
「大学時代アフリカの貧困問題を知るきっかけになった模擬国連に参加したのも、実は打ち上げパーティーがおもしろそうだったからという不純な動機(笑)。私は人に会うのが大好きなんです。異業種交流会やランチ会、朝食会に至るまで、ありとあらゆる集まりにバラと名刺を持って行き、バラの魅力と事業のミッションをアピールしました。広告費を使うよりデザインや包装にお金を回したかったし、共感してくれるファンを直接開拓したかったからです。
ケニアのバラは大輪で色が鮮やか。写真映えするし、フェアトレードは社会的意義もあるのでSNS向きです。贈った人も、もらった人も誰かに伝えたくなって、ネットで拡散しやすいコンテンツだということも功を奏したのだと思います」
評判が広がるにつれ、萩生田さんの周りにはバラに魅せられた多くのファンが集まってきた。ファンにとどまらず、経営や実務など苦手分野を手伝ってくれる仲間も現れ、会社は次第に大きくなっていった。2015年には広尾に実店舗も開店。当初はリスクのある実店舗営業に消極的だったが、事業を拡大すればケニアの農園で働く人たちの収入が増え、アフリカの貧困問題を改善するという目的に一歩近づくのだと勇気を振り絞り、踏み切った。
「開店資金はクラウドファンディングで調達しました。金額よりも仲間が欲しかったので、出資者にペンキ塗りまで手伝ってもらい、みんなで店をつくりました。アフリカのバラを軸にしてそこに人が集まるコミュニティーができ、新しいことやワクワクすること、社会問題の解決につながる活動が生まれることが大事だと考えていました」