育児経験がないことを責めても意味がない

ただ、SNS上では「政治家たちは子育てしたことがないのか」と怒る人もいました。しかし、子育てしたくてもできない人もいるわけですから、その点に対して感情的になるのはよくありません。この問題に関しては、政治家たちが育児未経験であることを責めても仕方がないのではないでしょうか。

では政治家たちはどうすべきだったのか。まずは今回の要望や発言がどんな混乱を招いたか、そしてもし実現していたらどんな混乱が起きたか、その点を考えてみたいと思います。

いつも使っているマスクが売り切れに。
いつも使っているマスクが売り切れに。(筆者=画像提供)

わが家の2歳児は「仮面ライダーリバイス」が大好きです。このキャラクターが描かれた不織布マスクなら少しの時間であれば着けてくれるので、うちでは公共の場や病院に出かけるときのために買い置きしています。

ところが、2歳児マスク着用の件が報道された2月4日、ネット通販では仮面ライダーリバイスのマスクが瞬く間に売り切れ、再入荷のめども立たない状況になりました。

今回の要望や発言は、保護者たちを一斉に“子どもが着けてくれそうなマスク”の購入に走らせ、急な売り切れを引き起こしたのです。つまり社会的混乱を招いたわけです。

政治家は「この分野に無知である」という自覚を

次に、もし「2歳以上」が実現していたら何が起こったか。いちばん大変になるのは保育園の現場の方たちでしょう。保育園の先生は、国から「2歳児にもマスクを着けるように」と言われたら従わざるを得ません。

コロナ禍で、小さい子どもと接する現場はただでさえ疲弊しています。そのうえ、嫌がる子どもたちにマスクを着けさせて回ることになるわけです。たとえ一時的に着けてくれても、小さな子どもは嫌だったらすぐに外してしまいます。それを四六時中チェックして、外していたら着けさせ、また外したら着けさせ……その苦労は察するに余りあります。

政策を決める人は、強い決定権を持っています。ですから、物事を決めたり発言したりする立場の人は、まず「自分はこの分野に関して無知である」という自覚をしっかり持っておく必要があります。