金融知識以前に大切なことがある

かように教師の価値観やファシリテーション能力の差により、洗脳的な教育になりかねないという側面をはらんでいます。

むろん、たとえば保証人と連帯保証人の違いやクーリングオフ制度など、契約の当事者になるからこそのリスクとその回避方法などを教えるのは、一定の役に立つとは思います。確かに「知っているか知らないか」で差がつくことはたくさんありますし。

しかし疑問があります。私たちはほぼ全員がこれまで金融教育などは受けることなく社会に出ました。

なのに、教わらなくても着実にキャリアを形成し計画的に支出・貯蓄するなどお金に困らない人がいる一方で、毎月給料日前にお金を使い果たしてキャッシングする人や、「ラクして簡単に儲かる」系の悪質な商材を買ってしまったり、詐欺的案件にお金をだまし取られる人がいるのはなぜなのだろうかと。

家計管理なんて単純な引き算の話であり、小学生でマスターしているはずなのに、社会人になってもできない人がいるのはなぜなのかと。

私は、家計管理とか住宅ローンとか株とか投資信託などという知識以前の、たとえば論理的思考力や想像力、予測・推測能力、クリティカルシンキング、問題解決能力、状況変化に応じて都度必要な学習ができる力、自己統制能力などといった、根源的な思考力とメンタルコントロールの問題ではないかと感じます。

基礎教科の土台があれば、詐欺は見抜ける

株や投資信託なんて別に高校生で知る必要性は高くなく、知ったところですぐに受験があり大学生活があり、社会に出れば投資よりもまず仕事の実力をつける方が重要になります。もちろん知らないよりは知っていた方が良いとは思いますが、興味を持った人が個々人で調べて投資すればいい分野のように思います。

それよりも前回の記事ではありませんが、数学や国語、物理といった基本教科の学習と深い理解、勉強方法の工夫や自身の課題分析に基づいた軌道修正、あるいは疑問に思ったことを探求する作業を通じ、強靭な頭脳を獲得する方が優先度が高いのではないでしょうか。

そうした土台があれば、わざわざ教わらなくても詐欺的な話は見抜けるし、カードのリボルビング払いがいかに不利かは計算しなくてもわかるし、住宅ローンの返済なども加味した家計管理ができるはずです。

たとえばアダルトサイトや出会い系サイトなどにアクセスできないように、子どものPCやスマホをフィルタリングソフトで制限するという方法がありますが、もっと重要なことは、そうした情報に触れたとしても、それで判断が揺らがない思考軸の獲得、安易に流されない価値判断基準の獲得の方が重要なのに似ています。

金融教育が無駄とは言いませんが(ディスカッションやディベート形式であれば大いに意味があると思います)、教員にも生徒にも、あまり負担にならない範囲でよいように感じています。