向こう10年間の累計額で考える

相場がわからなくても、初年度の年収が低くても、評価制度が自分にとって納得のいくものであれば、あまり思い悩まなくてもいいのではないでしょうか。転職者は、入社時点の年収だけを気にする人も多いのですが、それより向こう10年の累積年収を考えるようにしてみてください。

入社時点の年収が400万円で評価制度がしっかりしている会社と、500万円で評価制度が不透明な会社とでは、同じ実績を上げても今後10年間の累計額が大きく変わってくる可能性があります。スタート時の年収が低めでも累計額が高ければ、そちらのほうが「転職に成功した」と言えるでしょう。

人を大事にしている会社かどうか

もうひとつ、年収より気にすべきこととしては「労働分配率」も挙げられます。これは、その企業が生み出した付加価値のうち、どれだけを社員に還元しているかを示すもの。具体的な数値を知るのは難しいですが、業績がいいのに給与が低い、つまり労働分配率が低いようでは、人を大事にしている会社とは言えません。

最近は、社員持株制度やストックオプションなどで利益を社員に還元している会社もあります。利益をどう分けようとしているか、社員への報酬をどう考えているかといった部分は、会社の風土や今後の昇給の可能性を見極めるうえで非常に大事です。評価制度に加えてこの点もぜひ重視してください。

35歳以上の転職者は、若い世代に比べて採用が決まりづらく、活動時期も長引く傾向があります。そんな中で年収に関してあれこれ考えていると、せっかくのチャンスを逃す可能性も高くなってしまいます。初年度の年収にはあまりこだわらず、それよりも評価制度や報酬への考え方を知ろうという姿勢で面接に臨んでほしいと思います。

構成=辻村洋子

黒田 真行(くろだ・まさゆき)
転職コンサルタント、ルーセントドアーズ代表取締役

1988年、リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。2014年ルーセントドアーズを設立、成長企業のための「社長の右腕」次世代リーダー採用支援サービスを開始。35歳からの転職支援サービス「Career Release 40」、ミドル・シニア世代のためのキャリア相談特化型サービス「CanWill」を運営している。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』『35歳からの後悔しない転職ノート』『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』など。