年収800万円を超える「ハイパフォーマー」がポッキリ折れる背景

先程示した調査結果では、前兆なく休職するリスクの高い人を「隠れストレス負債者」と分類しています。調査によると、隠れストレス負債者の約63%が年収800万円以上のビジネスパーソンであることもわかりました。こうした「ハイパフォーマーのストレス」をどう考えたらいいでしょうか。

隠れストレス負債者の年収分配
出所=DUMSCO

日本でうつになりやすい性格傾向としてよく指摘される「メランコリー親和型」の人たちです。簡単に言うと、規範意識と責任感が強い、いわゆる真面目な優等生タイプの方です。もともとドイツの精神科医が提唱したもので、本来はもう少し神経質なニュアンスが強い言葉なのですが、生真面目な日本人の気質や精神性にフィットしたのか、広く受け入れられています。

そうした「“日本的な”メランコリー親和型性格」の方によく見られる傾向として、自分の都合よりも周りを優先して、環境からの要求や他者からの期待に完璧に近い形で従おうとする、「過剰適応」があります。自分の精神的負担を無視して、周囲のニーズに応えようとしてしまう。職務上の無理な要求に応えてくれて、こちらの意図も細かく察し、飲み会にも最後までついてきてくれるような人。上司にとっては理想の部下とも言えます。

当然、職場では重宝され、パフォーマンス評価も高くなりやすいといえます。その一方で、会社や周りの人のケアばかりをしていて、自らのケアを後回しにしがちなのです。

そうした「優等生タイプ」の方が、前日まで普通に仕事をしていたのに、ある日突然職場に来ることができなくなってしまうケースは決して珍しくありません。「積み重ねた信頼」が壊れてしまうことをおそれて、自らが限界であることを表明することが心理的に難しいのです。

貼られた付箋でPCのモニタは見えない状態
写真=iStock.com/baona
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強い企業カルチャーで社員を魅了する組織ほど、過剰適応になりやすい

過剰適応が起こりやすい企業の特徴として、大きなミッションを掲げ、やりがいもある魅力的な組織という特徴があるようです。

私の知人に、就活人気ランキングの常連企業に新卒で入社し、当時社内外から注目された事業部に配属され、エースとして活躍したのですが、心身の限界に達し「突然」休職をされた方がいます。その他にも、非常に強いカルチャーで知られた人気企業の方が受診されるケースは少なくありません。

なぜ「魅力的な企業」がメンタル不調者を出しやすいのか。その要因の一つは、強いカルチャーを持つ魅力的な企業ほど、その企業と自らのアイデンティティーとの同一化が起こりやすいという点があるように思います。