中国が不動産バブルをキープするために必要なこと

しかしながら、これはあくまで習近平が思い描いた(と思われる)青写真であり、実際に、そううまくいくとは限りません。確かに、これがうまくいけば、彼の支持基盤は盤石なものになるでしょう。しかし、このやり方は、下手をすると「バブル崩壊の引き金」にもなりかねません。なぜなら住宅価格の高騰を抑える政策は「もう不動産ではもうからない」というメッセージとも受けとれるため、投資家たちを「売り」方向に暴走させる危険性があるからです。

五星紅旗と中国の株価チャート
写真=iStock.com/Dilok Klaisataporn
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中国は、その気になれば政府の市場介入で、ある程度のバブル状態を維持することはできると思います。しかし金融のグローバル化が進んでいる今日は、外資の逃げ足も速いため、中国政府が望んでいる水準で維持できるとは限りません。

もし中国が今の不動産バブルの状況を「ほどよくキープ」したいなら、大切なのは次なるメッセージでしょう。つまり、何のために恒大集団に厳しくあたっているのか、それによって国民がどんな得をできるのか、これらが富裕層と一般民衆のすべてにちゃんと伝わらない限り、中国は不慣れな市場経済に足元をすくわれかねないのです。

蔭山 克秀(かげやま・かつひで)
代々木ゼミナール公民科講師

「現代社会」「政治・経済」「倫理」を指導。3科目のすべての授業が「代ゼミサテライン(衛星放送授業)」として全国に配信。日常生活にまで落とし込んだ解説のおもしろさで人気。『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』(KADOKAWA)など著書多数。