数学などの勉強を通じて脳は訓練されている

重要なのは「抽象化思考力を獲得する」ことであり、「具体と抽象を往復する習慣をつける」ことです。

実はその訓練が、たとえば国語や数学、物理などの学習によって行われています。

数学ではリンゴ3個、自動車3台、ネコ3匹も、すべて「3」で扱えるように、抽象化して考えます。

その数学で出てくる素数や虚数、サイン・コサイン・タンジェントなどは、技術開発分野など以外では、社会に出てもまったく役に立たない知識です。

しかしこのように目に見えない世界を扱う分野は極めて抽象度の高い学習となり、いろいろな角度から脳を刺激し抽象化能力を養うために役立っているのです。

「実生活で使えない数学なんて何の役にも立たない」と言う人は、数学を学ぶことの本当の意味をわかっていない。こういう人ほど抽象化能力が低く、ゆえに稼げない(むろん数学が苦手だった人でも抽象化能力が高い人はいますが、一般的に)。

数学に限らず学校の勉強は、実生活で役に立つ知識を身に付けるためではありません。

実生活でさまざまな問題に直面したとき、自分がもっている知識と思考の枠組みを活用・応用し解決できる思考回路を創るためなのです。

つまり頭脳を鍛えるのが学校の勉強の目的なのですが、ここを誤解している人は少なくないようです。

これは大学の勉強でも同じく、1、2年次で教養科目が重視されるのは「物事の価値判断基準」を養うためであり、すぐには役に立たないからこそ長く使えるし差別化にもなるのです。

稼げる人とそうでない人の決定的な違い

「お金」も抽象度の高い概念です。パン、コップ、ネジなどとモノが異なっても、100円であれば100円で買えます。

2%のインフレであれば、現在の100円は1年後の102円ですから、いま買っておくかどうかやインフレで値上がりする資産を保有するかどうかなどの判断材料にもなります。

だから抽象化思考力が高い人は、お金も自由にコントロールできます。お金が足りなくなってキャッシングしたり消費者金融に駆け込んだりするということもありません。

勉強を通じ、抽象化思考を高いレベルで獲得した人は、仕事の面でもお金の面でも、あらゆる方面で具体と抽象の往復が可能です。

ただし、これが「点数を上げるため」だけで勉強していたら、あるいはパターン暗記だけで乗り切ろうとしていたら、なかなか身に付かないでしょう。

この具体と抽象の往復、特に抽象化能力の獲得が、高学歴と低学歴の差、そして高学歴であっても稼げる人とそうでない人を分かつ原因のひとつではないか。そして高学歴者の多くは学習を通じてこの能力を身に付けてきたのではないか、というのが私の仮説です。

ただしこの能力は、学校の勉強がたまたま苦手で低学歴であっても、その後の思考習慣を通じて後天的に身に付けることができます。その方法については改めてご紹介したいと思います。

午堂 登紀雄(ごどう・ときお)
米国公認会計士

1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒業後、会計事務所、コンビニエンスストアチェーンを経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。IT・情報通信・流通業などの経営戦略立案および企業変革プロジェクトに従事。本業のかたわら不動産投資を開始、独立後に株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズ、株式会社エデュビジョンを設立し、不動産投資コンサルティング事業、ビジネスマッチング事業、教育事業などを手掛ける。現在は起業家、個人投資家、ビジネス書作家、講演家として活動している。著書に『33歳で資産3億円をつくった私の方法』(三笠書房)、『決定版 年収1億を稼ぐ人、年収300万で終わる人』(Gakken)、『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』(日本実業出版社)、『お金の才能』『お金の壁の乗り越え方 50歳から人生を大逆転させる』(かんき出版)など。