実績がない場合にPRすべきポイント
では、解決した実績がない場合はどうすればいいのでしょうか。この場合は、面接官に「この人なら、今は解決経験がなくても将来的にできるだろう」と思ってもらうことが大事になります。そのためにも、解決にチャレンジした事例や試行錯誤した過程があれば、そこをしっかり語ってください。
チャレンジした結果が失敗に終わったからといって、その経験や試行錯誤した過程がゼロになるわけではありません。目に見える成果や実績がなければ、「自分は解決に向けて行動できる人材である」とPRすることはできます。
同時に「前回は実現に至りませんでしたが、次はこうやって成功させようと思っています」と言うことができれば、失敗から学べる人だと印象づけることもできます。
ただし、失敗に終わった理由を会社や上司のせいにするのは避けるべきです。「会社の風土がよくなかった」「上司が無理解だった」などと言うと、それもまた課題のひとつになりますから、どうすれば解決できたと思うのか、そこまでセットで伝えないとただの批判になってしまいます。
課題解決への「トライ経験」に価値がある
繰り返しになりますが、企業がほしがるのは評論家予備軍ではなく、課題を解決できる人です。30歳を過ぎてからの転職面接では、この部分は特に厳しく見られていると思ってください。
そこさえしっかり押さえておけば、成果や実績がないからといって「面接でPRできることがない」と転職をあきらめる必要はありません。例えば企画提案をしたことがあるのなら、そこには何らかの課題を解決しようという思いがあったはずです。その思いや試行錯誤の過程を、ぜひ面接で語ってください。
課題解決は、たとえ失敗に終わってもトライすることに価値があるのです。採用側もそこを見ています。「前の会社でトライしたのならきっと自社でもそうしてくれるだろう」「トライし続けてくれれば成功の可能性も高まるだろう」と考える企業は少なくないはずです。
もちろん成功経験があるに越したことはありません。でも、そうでなくてもあきらめる必要はなく、PRできることはたくさんあるのです。
こうした「課題解決のために試行錯誤した経験値」は、近年、個人差が大きくなる一方です。言い換えれば、その経験があれば転職活動において大きな強みになるわけです。この強みを生かさない手はありません。
将来的に転職を考えている人は、今のうちに課題解決に向けて試行錯誤する習慣を身につけておくことをおすすめします。そして「実際にトライした経験」をできる限り多く積み重ね、自分の課題解決力を第三者に語れるようにしていってください。それが面接でのしっかりした自己PRに、ひいては転職活動の成功につながっていくのではないかと思います。
構成=辻村洋子
1988年、リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。2014年ルーセントドアーズを設立、成長企業のための「社長の右腕」次世代リーダー採用支援サービスを開始。35歳からの転職支援サービス「Career Release 40」、ミドル・シニア世代のためのキャリア相談特化型サービス「CanWill」を運営している。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』『35歳からの後悔しない転職ノート』『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』など。