勤務時間外の業務は「労働」か、自発的なボランティアか?

以上の2つの争点と関わるが、この裁判を参照しつつも、もう少し全般的に改めて考えたいことがある。教員の仕事は、どこからどこまでが「労働」なのか、ということだ。

他の先進国と比べても、日本の教員の業務量は多いし、多岐にわたる(OECDのTALIS調査などを参照)。勤務時間内では終わらないことは多く、どうしても勤務時間外にはみ出すことも多いわけだが、これは労基法上の「労働」に当たらないのだろうか。

最高裁判例を紐解くと、京都市立の小学校と中学校の教諭が訴えた事案(京都市事件)がある。この件では、研究発表校になったことなどから発生した授業準備や新規採用者への支援・指導、テストの採点、部活動指導等の過重な時間外勤務が、校長の安全配慮義務違反に当たるかどうかが問題視された。最高裁の見解を以下に要約する(最三小判平23.7.12)。

校長は「個別の事柄について具体的な指示をしたこともなかった」のであり、「明示的に時間外勤務を命じてはいないことは明らかで」、「また、黙示的に時間外勤務を命じたと認めることはでき」ない。「強制によらずに各自が職務の性質や状況に応じて自主的に上記事務等に従事していたもの」と考えられる。

校長の指揮命令があったかどうか

このように、授業準備やテストの採点、部活動などは、教師の自発的、自主的なもの、つまり校長の指揮命令の下での「労働」には当たらないと判断をする裁判例はこれまでも多い。

さいたま地裁の判決も基本的にはこれを踏襲しているように見える。

たとえば、朝の登校指導は校長も把握しており、参加を働きかけていたものであるから、「労働」であるとした一方、朝学習(朝の自習)の準備に要した時間外勤務は、個々の教員の自主的なものだからとして「労働時間」と認定していない。

休憩時間中に行った連絡帳やドリル、音読カードの確認も、校長が指揮命令したものではないので、「労働時間」として認めなかった。ただし、休憩時間中の会議や学校行事の練習は「労働時間」として認定した。