今から考えると恥ずかしいような失敗も

「ただ、投資を始めたとはいうものの、何もわからない状態でヨチヨチ歩きですからね。ずいぶん失敗もしましたよ」

どんな失敗がありましたか?

「証券会社の営業マンに言われるままに株式や投資信託を乗り換えたりしながら売買を続けたんです。いずれも今から思うと手数料の高いものばかりでしたね。結局、当時投資していた200万~300万円のお金がほとんどなくなってしまった。いわゆる“スっちゃった”という状態ですね(笑)。あと、本当に恥ずかしいような失敗もしました。いわゆる投資詐欺ですね。健康に良い水を造るとかいう会社への投資話とかに乗ってしまったのです。今でも目の前で100万円を相手に渡した時の光景を覚えています」

リスクブロックを取り除く人間の手
写真=iStock.com/takasuu
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「でも失敗したからわかったことも多いんですよね。要は『こういうことをしなければ失敗はしないんだ』ということがわかったのが大きかったと思います。だからやはり失敗することは大切なんです」

そんな失敗を重ねながらもうまく行くようになったきっかけは何でしたか?

「1995年頃に地元証券会社主催のセミナーに、さわかみ投信の創立者澤上篤人さんが来られたのですが、その時のお話を聴いておおいに共感しました。その直後に『さわかみ投資顧問』と契約し、後に設定された『さわかみファンド』に運用資金をどんどん移していったんです」
「私は好きなこと、興味のあることはとことん突き詰める性格なので、その後も数カ月に一度開催されていた澤上さんのセミナーに出席しては質問攻めにしていました。同時に投資に関する書籍も読み、自分でとことん納得できるまで勉強しましたね」

なるほど、それで、投資信託の積立を始められたんですね。

「いえ、当時はそうではありませんでした。資金ができるたびに追加でスポット購入するということを繰り返していました。でもそれまでローンを返済していた勢いでお金を投資に回していきましたから、残高は着実に増えていきましたし、マーケットの環境が良かったこともあって。さわかみファンドでは大きな含み益が増えていきました。2000年には気が付くと、私と妻の持っている金融資産が7000万円ぐらいまで増えていたのです」

ITバブル崩壊時は呆然と、何もできず……

「ところが、そんな時にやってきたのがITバブルの崩壊です。さすがにこの時は自分の資産が大きく値下がりするのをただじっと見ているだけでしたね。記録は残っていませんが、恐らくその時点での評価損の額は2000万円を超えていたはずです。

今だったら、好機と捉えて大きく買い増しをするところですが、当時はそんな気持ちの余裕は全くありませんでした。ただ、澤上さんから『こういう暴落の時は絶対売ってはいけない! むしろ買うべきだ』と言われていたので、売ることはしませんでした。さすがに買う勇気はなかったですけどね(笑)。損切りするということは損が確定してしまうということなんですよね。でも市場は長期的に見れば成長していきますから、たとえ下がっても保有し続けて待つことさえできれば心配することはないのだということを学びました」