ジェンダーレスが当たり前の時代

近年、SDGsの認知や学校教育の影響もあり、「ジェンダーレス」の概念が、当たり前になりつつあります。「男たるもの」や「女だから」といった表現や商品、サービスは、日本社会からも姿を消す方向に向かっていると言えるでしょう。

分かりやすいのは、「学生の制服」。かつて、女子はセーラー服、男子は詰襟が当たり前とされた時代もありましたが、いまや女子にもスカートと共に「スラックス可」とする、あるいは男女共通で同じブレザー制服を導入する、といった時代。

21年、菅公(カンコー)学生服が、全国の小中高の教員(1800人)を対象に行った調査では、LGBTQや男女のジェンダーレスな服装(制服)になんらかの配慮を行っている、あるいは予定している学校が、約6割にものぼったのです。

時代に遅れる婚活業界

一方で、婚活業界では、相変わらず「男性が有料」「主導権は男性」とするサービスが圧倒的に多い。これは、現代の若者に多いジェンダーレス志向や、近年、20代男女(毎月給与を受給する人)の年収が「年間50万円程度」の差にとどまることを考えても、あまりに時代遅れに映ります(21年国税庁「民間給与実態統計調査」)。

20年、花王グループのエキップは、新たなスキンケア&ライフスタイルブランド(「アスレティア」)で、「ジェンダーレス」を打ち出しました。また、真珠のミキモトも、20年2月に「コム デ ギャルソン」とコラボしたネックレスの販売をスタート。広告に男性モデルを起用し、ジェンダーに捉われない商品との訴求を始めています。

企業としては、従来と同じマーケットを狙うほうが楽です。ですが、時代は変わりました。消費者や婚活中の男女の価値観も、変わりつつあります。今後、どの市場を狙っていくのか、それはより真剣に消費者や社会と向き合おうとする、経営者の「覚悟」次第だと言えるのではないでしょうか。

牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ)
マーケティングライター、世代・トレンド評論家、インフィニティ代表

立教大学大学院(MBA)客員教授。同志社大学・ビッグデータ解析研究会メンバー。内閣府・経済財政諮問会議 政策コメンテーター。著書に『男が知らない「おひとりさま」マーケット』『独身王子に聞け!』(ともに日本経済新聞出版社)、『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)、『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー21)ほか多数。これらを機に数々の流行語を広める。NHK総合『サタデーウオッチ9』ほか、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。