資産1億円以上の世帯は2.4%
最近、「億り人」という言葉がメディアやSNSによく登場するようになりました。これは昔、アカデミー賞外国映画賞を受賞した映画で納棺師を描いた『おくりびと』にお金の億円を掛け合わせたことばで、一般的には純金融資産が1億円以上ある人のことを「億り人」と言います。最近、私は『となりの億り人』(朝日新書)という本を書いたのですが、実は1億円以上の金融資産を持つ人はわれわれが考えている以上に多いようです。
2020年に野村総合研究所が発表したレポートによるとわが国で純金融資産1億円以上を持つ世帯の数はおよそ133万世帯あるそうです。日本における一般世帯数は2020年時点で5572万世帯ですから、その割合は約2.4%です。つまり100人いればその内の2~3人は億り人だということになります。私が今住んでいる団地は1500世帯ほどありますので、この割合で計算すると36世帯は「億り人」だということです。ひょっとしたら私の家の向かいに住む人やとなりに住む人もそうなのかもしれません。私の書いた本、『となりの億り人』というタイトルにはそんな意味も込められているのですが、このタイトルにはもう一つの意味もあります。
株の短期売買で巨額の資産を築いた人はいない
それは億り人になった人は特別な人ではない、ということです。一般的には「億り人」というと、“仮想通貨が爆上げして一躍億万長者に”とか“FXであっという間に1億円を達成!”みたいな記事やコメントが多いです。でもそういう人は全くいないわけではないでしょうが、実際には恐らく数万人に一人ぐらいで、とても100人に2~3人などという割合でいるわけがありません。
実際に私は40年近くにわたって3万人以上の個人投資家の投資相談を受けてきましたが、株の短期売買を続けて巨額の資産を築いた人はこれまで一人も見たことがありません。ところが地味な普通の会社員で、特に変わったことをしていなくても1億円以上の資産をこしらえた人はたくさんいるのです。短期売買どころか、本書でインタビューした億り人の1人に女性のビジネスパーソンがいますが、彼女は株式投資や投資信託すらそれほどやっていないと言います。