めったに家事をしない夫が珍しく皿洗いをした。どうすればこれが毎日続くようになるだろうか。「家事は食器洗いだけじゃない!」と言いたい気持ちをぐっとこらえて、繰り出すべき声かけの言葉とは――。

※本稿は、平本あきお 前野隆司『幸せに生きる方法』(ワニ・プラス)の一部を再編集したものです。

問題解決の2つのアプローチ

解決したい問題に直面したとき、私たちはたいてい原因論を用いています。「物事がうまくいかないのは、どこかに悪いところ(原因)があるせいだ。それを見つけて直せばいい」という考え方です。しかし、人の主観が関わると、それでは解決できないケースがあることがわかりました。それどころか、アドラーは意識を向けたところが強化されると考えますから、原因論の解決法はむしろ悪いところ(=原因)を増やしてしまう結果になりかねないのです。

ではどうするのか。目的論を使うのです。

あなたのパートナーや恋人、親友にが誠実で、思いやりがあって、努力家で、気が利いて、責任感があって、優しくて、素直で、几帳面という特徴があるとして、1つだけ悪いところ=退屈を見つけました。原因論では、この悪いところに焦点をあてますが、目的論では、ここに意識を向けるのではなく、その反対に意識を向けるのです。退屈の反対は楽しいとかロマンチックとかでしょうか。そう決めたら、そこに意識を向けて、強化するようにしていきます。

【図表1】目的論の問題解決モデル
出典=平本あきお 前野隆司『幸せに生きる方法』(ワニ・プラス)より

目的論の問題解決手順をまとめると、こうなります。

〈目的論の問題解決〉
ステップ1=強化したいところ(悪いところの反対)を決める
ステップ2=指摘する
ステップ3=上手くいく

「あなたのそういうところが退屈だ」の代わりに…

つまり、悪いところの逆(退屈ならば、楽しい・ロマンチック)が発生しているところを指摘すると、意識がそちらに向き、悪いところの逆の発生率が高まる、というわけです。

この例で言えば「あなたのそういうところが退屈だ」と指摘するのではなく、たとえば「去年のクリスマスにもらった手書きのカードはうれしかった」と伝えます。

言われたあなたはどう感じますか?

うれしくなって「今年もあげようかな」「今度はもっとすごいことをしようかな」なんて自然に思えるのではないでしょうか。少なくとも、原因論のときのように反発する気持ちは湧きにくくなると思います。

イメージをつかみやすくするために、具体例をいくつか挙げてみます。