お互いに思い合う想像力をもって

ものは考えようということ。そう思えるようになったのは、社会に出て世界が広くなり、普通だと思っていた自分の家庭の堅苦しさに気づいたこともあると思います。同世代でも世の中には「父親が威張らない」「何でも柔軟に話し合えるフラットな家庭」もある。無理して学費を払ってくれたことには感謝していますが、おかんが1人で抱え込まなくても、時間をかけて父と話し合うとか、資金を調達する方法はほかにもあったはず。そう思うと「ひょっとしておかんは苦労を好んで背負い込む癖がある?」と案じることも。

夫婦でも親子でも誰かの犠牲の上に成り立つ関係はよくない。お互いに思い合う想像力をもって向き合い、問題があっても自由な発想でクリエイティブに解決するのが理想だと思います。

構成=モトカワマリコ 撮影=国府田利光

大宮 エリー(おおみや・えりー)
作家、画家

東京大学薬学部卒業。2012年、東京国立博物館で行われたモンブラン国際賞の福武總一郎氏の受賞セレモニーで急遽依頼されたライブペインティングから画家のキャリアがスタート。2016年には美術館での初の個展「シンシアリー・ユアーズ」(十和田市現代美術館/青森)を開催。同時に商店街を使ったパブリックアートも手がける。また十和田市の水力発電所、奄美大島のこども図書館、妹島和世氏による家プロジェクトなどで壁画作品も制作。2019年には香港、ミラノ、パリにて、2022年にはロンドンのギャラリーブラキアにて個展を開催。瀬戸内国際芸術祭2022でも出展作家として犬島に作品を発表。