働き方が変化してきている

対比をわかりやすくするためにお神輿型と言われる1970年と比べてみましょう。当時のサラリーマンの定年年齢は何歳だったかご存じですか? 会社によって違いますが、その頃は55歳定年というところが普通でした。

法律で60歳未満の定年を禁止したのは1998年の「高年齢者雇用安定法」の改正によってですから、それまでは55歳定年という会社が多かったのでしょう。私も1974年に社会人になりましたが、当時の定年は55歳でした。かつ当時の平均寿命は男性が69歳です。すなわち定年後の余生は14年でした。

ところが現在の定年年齢は60歳というところが多く、かつ男性の平均寿命は81歳ですから定年後の余生は21年と大きく延びています。言うまでもなく60歳で定年を迎えた後も働いている人は増えています。多くの会社では60歳の定年後も再雇用制度等がありますから、働き続けている人は多いのです。令和元年度の「高齢社会白書」によれば、60歳~64歳までの間で働いている人の割合は男性で約81%、65歳~69歳は57.2%、そして70~74歳でも38.1%の人が働いています(※1)

※1 令和元年版「高齢社会白書

少子高齢化が進行しても年金は崩壊しない

これらの人たちが労働人口に占める割合は増えつつあります。1970年当時、労働人口に占める65歳以上の割合は4.5%でしたが、現在は13%近い数字に上昇してきています。

つまり働く高齢者は当時と同じ年齢では比較にならないぐらい増えたのです。同様に働く女性の数が増えたことも著しい特徴です。図表4を見ると、1980年では専業主婦家庭が1114万世帯だったのが、2020年には571万世帯と半減しています。逆に共働き家庭は614万世帯から1240万世帯へと倍増です。このように就業者が増加し、保険料を負担する人数が増えていることで、そのバランスは50年前から20年後に至るまでほとんど変わっていないことがわかります。単に年齢だけで切って「お神輿」だの「肩車」だのと言ってもあまり意味がないことがおわかりいただけたでしょう。

大江英樹『知らないと損する年金の真実 2022年「新年金制度」対応』(ワニブックス)
大江英樹『知らないと損する年金の真実 2022年「新年金制度」対応』(ワニブックス)

この流れは今後も続いていきます。現実に2021年の4月からは「70歳までの就労機会の提供」が企業に対して努力義務として求められるようになりました。平均寿命の伸長を考えると、65歳定年、そして70歳まで働くのは当たり前という時代になりつつあるのです。

したがって「少子高齢化が進むから」という理由だけで「年金は崩壊する」わけではありません。

たしかに1970年当時から考えると少子高齢化はかなり進んでいるものの、その間、さまざまな制度の見直しを行ってきたことでそうした時代に十分耐えうるような改革が行われてきているのです。

結果として少子高齢化がピークを迎えるとされる2040年でも現在とほとんど変わらない状況が続く可能性は高いと思います。実態を無視した、数字の根拠のない年金破綻論はあまり意味がないと言って良いでしょう。

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト

大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。