なぜ名字を変えなければならないのか
夫婦のどちらかが改姓を強制されるのは、現在の民法の下では「同一の戸籍内に、違う名字の人を登録してはいけない」という「同一戸籍・同一氏の原則」があるためです。夫の名字と、妻の名字が異なっていると、登録できないきまりになっているのです。
戸籍には、以下のように登録されます。
※花子さんの本名は「戸籍花子」、太郎さんの本名は「戸籍太郎」となる。
本名を変えずに結婚する方法
それでは私たちが求めている選択的夫婦別姓を実現しようとした場合、「本名を変えずに結婚する」にはどのような方法があるのでしょうか。いくつか選択肢が考えられると思います。
①同じ戸籍内に、違う名字の人を登録できるようにする
②「同一戸籍・同一氏の原則」を守るため、違う戸籍に登録された違う名字の人を婚姻関係として登録できるようにする
③現在の戸籍制度はそのまま変更せず、改姓したくない夫婦には事実婚をしてもらい、そこに法的根拠を持たせる「パートナーシップ管理制度」などを新たに作り並行して運用する
※両者は別々の戸籍に登録されており、戸籍上の名字に変更はなし。婚姻関係は戸籍に登録されないが、別の仕組みでパートナーシップを管理する。
④戸籍制度は変更せず、「戸籍上の氏名が本名」という現状の仕組みを変えるために法律を改正し、現在ある戸籍と本名との関係性を切り離す
この場合は例えばマイナンバーに、婚姻後も婚姻前の氏名を登録し続けられるようにして、「マイナンバーの氏名が本名」とするなどが考えられる。
少し想像するだけでも②、③、④を実現するには大掛かりな変更が必要で、どこにどれくらい影響が出るのか考えるだけで気が遠くなりそうです。②は、現行の戸籍制度に大幅な改修が必要になりそうですし、③と④についても、複雑な法改正をしたうえでシステム開発と運用に多大なコストが発生し、自治体の受付窓口の業務も複雑化するでしょう。
①の「同じ戸籍内に、違う名字の人を登録できるようにする」という考え方が、もっとも今の戸籍制度からの変更が少なくて済みそうです。
これをベースにしてさらに見ていきます。この場合、窓口での手続きをどのように変えるのがもっとも合理的かを考えてみます。