人はなぜ陰謀論に影響されてしまうのか
ワクチンに反対する人の中には、「副反応が心配だから」という人もいますが、陰謀論に影響された人も多くいるようです。なぜ、新型コロナに関する陰謀論が広がっているのでしょうか。
新型コロナウイルス感染症は、比較的最近に突然広がり、今も未知の部分が多い病気です。そしてそのワクチンも、最近開発され、使われるようになったもの。病気に対してもワクチンに対しても、不安や恐怖感を持つのは自然なことでしょう。
わかりにくいものを、わかりにくいままにしておくのは、余計に不安です。未知のものを、未知のままにしておくのは怖い。誰か、何でもいいので未知のもの、わかりにくいものを、シンプルに説明してほしい。そうした心理から、陰謀論にすがってしまうのです。
さらに、このように不安にかられているときは、情報を収集するときも、つい自分の考えをサポートしてくれる情報を集めがちです。特にネットの情報は、一度特定の記事を読むと、似たような内容の記事ばかりを勧めてくるという仕組みになっているので、異なる意見の記事が目に入りにくくなります。
こうした仕組みは、例えば一度気に入ったデザインの靴を見たら、似たようなデザインの靴の情報を見せてくれたりするので、便利な時もあります。しかし、もし陰謀論にのっとった意見の記事を見ると、どんどん似たような陰謀論の主張の記事ばかり目に入るので、どんどんゆがんだ主張に影響されてしまいます。
このような傾向は、コロナウイルスやワクチン接種に限りません。普段から、あえて自分と違う意見を調べてみようという姿勢が、現代のネット社会で生活するうえでは必要だと思います。
構成=池田 純子
産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。