断る「言い訳」になるルールを作る
しかし、もういよいよ感染対策がいやになって、マスクもせずに遊びに行ってしまう人も現実にはいます。「俺が我慢しているんだから、お前も我慢しろ」という同調圧力の中で、マスクもせずに遊びに行くというのは、ある種、空気を読まない人、というか、それが自分らしさだと思っている人でしょうね。
ただ、家族にそういう人がいると、ちょっと困りものです。
たとえば先日は、「20代の息子が『自粛はもう疲れた』と友達と飲みに行ってしまい、家族としては感染されても困るし、どうしたものか」という相談がありました。
確かに遊びたい盛りの20代の若者に、この状況はとてつもない閉塞感があるだろうし、それを親から止められると、ますます窮屈に感じて反発したくなるでしょう。
ただやはり、家族で何かしらのルールはあってもいいと思います。たとえば「緊急事態宣言中は友達と外食しない」「夜は20時までに帰る」などです。「もし感染したら、あなただけではなく、あなたの大切な友達にも迷惑をかけてしまうことになる」などと、丁寧に説明します。
親が提案し、話し合ってルールを決めれば、子どもは友達に「言い訳」がしやすくなるでしょう。子どもには子どものコミュニティがあるので、ほかの友達みんなが「一緒に飲みに行こう」と言っているところで、自分だけ違う行動はとりにくいかもしれません。しかし、こうしたルールがあれば、「いや、俺は別にいいんだけど、親が厳しく言ってくるからしょうがないんだよ」と言い訳ができ、友達との関係を気まずくさせずに断りやすくなります。親としては、そういった「逃げ道」を意識して作るのも良いと思います。
「達成感」でコロナ疲れを乗り越える
それでは、対策疲れを乗り越えるにはどうすればよいのでしょうか。
これはやはり、ストレス解消しかありません。
おすすめは、何か新しいことを始めることです。今までの生活になかった新しいことを始めることは、よい刺激となってストレス解消につながります。コロナ禍だと、できることは限られるように思えるかもしれませんが、実はいろいろ考えられます。
僕の患者さんの中にも、ガーデニングやミニ盆栽、オンラインのヨガや英会話、楽器のレッスンなどを始めた人がいます。
ポイントは「達成感」です。勝ち負けや点数だけでなく、「できなかったことができるようになる」という感覚が大事です。
コロナ禍の難しさの一つは、見通しが立ちにくいところにあります。いつまで続くかわからず、期限が見えない不安もあります。自分の力ではコントロールができない無力感もある。しかし、何か新しいことを始めて「できるようになる」という達成感を持てれば、そうした無力感を多少なりとも払拭できますし、「次は花が咲くのが楽しみ」「次は○○ができるように頑張ろう」と、次のステップが楽しみになります。
ゴールの見えないコロナ禍ですが、自分で小さなゴールを作っていくことで、何とか乗り切っていただきたいと思います。
構成=池田 純子
産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。