女性はガマンや無理を重ね心の不調に気づかないことも

心身の機能は、脳内で神経細胞同士が情報を伝達し合うことで保たれています。しかし、ストレスを感じると、セロトニンなどの神経伝達物質が減って情報の伝達に不具合が生じ、心身の不調を招きます。

心の疲れチェック!

ストレスによる心の不調は、落ち込みやイライラ、集中力の低下など個人差があり、症状が日によって変わることも。さらに女性の場合、生理前や更年期に女性ホルモンの分泌量が変動するなど、さまざまな要因が絡み合って心の不調が起こります。そのため「転んで骨折をしたから痛い」という明確な症状と異なり、本人さえ不調に気づいていないこともあるのです。

女性はマルチタスクを求められる場面が多く、つい無理をしがち。頑張りすぎることが当たり前の状態になり、自分では無理やガマンをしていると思っていない場合があります。さらに、無意識にストレスにふたをしてしまう人や、イヤだと感じた気持ちに気づかないフリをする人もいます。こうした人たちは、会社に行こうとすると、腹痛や頭痛、吐き気といった身体症状が出ることが多いようです。

現在は、コロナ禍によって生活が大きく変化し、「つらい」と感じるのは当たり前。思うように人と会って話せないストレスがあるほか、マスクをしていて表情が見えないため、会話中に「相手はどう思っているだろう?」など、無意識のうちに情報を得ようとして緊張が続きます。また、ウェブ会議も空気を読むのが難しいもの。さまざまな変化にストレスを感じて、どんどん積み重なっていくのです。

こうした状況でも女性は仕事や家族を優先し、自分のことが後回しになりがち。「私がいなければ」と考える女性も多いですが、あなたの心が壊れたら、職場の人たちも家族も巻き込まれます。まず自分を最優先に考え、大切にしましょう。

私のクリニックにも、ガマンし続けて、心が疲れきってから受診する人が多いですが、つらいときは、「つらい」と早めに言うことが重要です。さらに、普段の生活の中で心が整う生活習慣を実践し、自分をしっかりケアしていきましょう。(福永先生)

心を整える生活習慣

構成=籔 智子 イラスト=大山奈歩

高尾 美穂(たかお・みほ)
産婦人科専門医

女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長、スポーツドクター、Gyne Yoga主宰。女性のライフステージ・ライフスタイルに応じた診療のほか、女性アスリートのメディカル・メンタルサポートを行う。

福永 伴子(ふくなが・ともこ)
精神科専門医

ともクリニック浜松町院長、日本精神神経学会認定専門医、日本医師会認定産業医。患者の悩みや不安を理解し、見た目や数値ではわからない心の不調を改善する診療を目指す。