中国におむつの工場をつくってはいけない理由

一時期、中国の人たちが日本に来て、日本製のものを大量に買う「爆買い」をしていたことがあります。P&Gやユニ・チャームなどのおむつメーカーは、早くから中国に工場を建て、中国人向けの製品を現地生産するという戦略をとっていました。しかし中国の人からすると、それは全然うれしくない。

なぜなら中国国内に工場を建ててしまうと、そこで働くのは中国人です。いくら日本向けと同じ仕様でつくるよう指示されていたとしても、それが守られるかどうかは別の話。「安い原料にすり替えて利幅を増やすに違いない」などと想像してしまう。それに「工場が中国にあると、配送の途中でニセモノにすり替わるかもしれない」と言います。だからみんな日本に来て、直接買っていたのです(いまは信頼性の高いECサイト経由で「爆輸入」が行われています)。

2カ月の赤ちゃんと積み上げたおむつ
写真=iStock.com/Polina Strelkova
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ですから単純に日本企業の製品というだけではダメ。メイドインジャパンであり、なおかつ中国人の手を経ることなく、手元に来たものがいいのです。

出遅れた花王がラッキーだった

このような中国の消費者の意識の高まりにつれて、P&Gやユニ・チャームの現地生産のおむつの売れ行きが振るわなくなる一方で、花王のおむつ「メリーズ」は爆買いされて品切れになるほどでした。

実は花王も中国への本格的な進出を検討していたものの、その機会を逃したため、現地生産品はあまり流通していませんでした。そういう状況のとき、中国で流通していないが日本に良いおむつがあることを知った中国の人たちが、わざわざ日本まで買いに来たり、転売業者が代理購入(代購)したりしたので、日本の店頭からメリーズが消えた。つまり花王は出遅れたのが幸いしたのです。

日本企業の多くは、中国が大事な市場だと思うと、中国の人たちに合わせた商品を開発しようと現地に研究所をつくったり工場を建てたりしてしまいます。しかし中国に関してはそれが裏目に出るリスクが高いのです。