「政治は年寄りのもの」を変えないと

【アル】そもそも芸能人が政治を語るなって言ったら、会社員も学生も主婦も誰も語れないじゃないですか? 国民が意見を言ってそれを反映するのが民主主義なのに、わかってないのはそっちだろって。

アルテイシア『フェミニズムに出会って長生きしたくなった。』(幻冬舎文庫)
アルテイシア『フェミニズムに出会って長生きしたくなった。』(幻冬舎文庫)

【田嶋】だから民主主義はまだ日本に浸透してないってことですよ。50年近く前、イギリスに留学した時に驚いたのは、お父さんが家事や育児をしてよく働くこと。それから、朝ごはんの席で子どもと親が政治のことで侃々諤々かんかんがくがく話してるの。「サッチャーはこう言ってたけど、あれおかしいよね」「でも、ここはこうじゃない」って小学生、中学生の子たちも政治を語ってるんだよ。日本はそれないでしょ。

【アル】日本の食卓ではあんまりないですよね。

【田嶋】日本では政治は年寄りのおじさんのものでしょ。とにかくそこを変えないと。今回のコロナでハッキリわかったじゃない、政治家がしっかりしないと自分たちが死ぬかもしれないって。家族がそろって政治について語るのが、本当の民主主義ですよ。

とにかく法律を変えること

【アル】先ほどのスウェーデンの友人は娘さんが中学生なんですけど、すごく政治に詳しくて親に教えてくれるそうです。学校でも友達同士で政治の話をよくしてるって。「スウェーデンでは政治を批判することは国民の義務だし、良いことだとされてるよ」と言ってました。

【田嶋】それだよ、そこだよ。やっぱり小学校の時からの教育が大事。それができる先生とカリキュラムが必要だよね。まずは、ジェンダーフリー教育をもっとしっかりやらないと。このまんまだと、日本の女性も男性も人間として、自立しにくいんじゃないかな。

【アル】もうすぐ沈没しますよね。タイタニックなヘルジャパン。

【田嶋】選択的夫婦別姓だって民法を変えなきゃダメ。若い女の人、生き生きした女の人たちがみんな一斉に反対してごらん、きっと変わるよ。怒りはね、政府にぶつけなきゃ!

【アル】今はSNSを使った新しいフェミニズム、第4波フェミニズムと呼ばれてますけど、森喜朗氏の女性蔑視発言にもSNSなどで署名が大量に集まって辞任に至りましたよね。

【田嶋】そうそう。今の若い女の人たち、みんな、怒りは喉元まできている。権利意識も自分たちの誇りも満ち満ちている。あとは行動だよね、SNSを駆使して世論を盛り上げれば、法律を変えることは可能。そうやって政治に参加することで、自分たちの生きやすい社会は作れるはず。「自分の1票なんか」と卑下しない。自己評価を高く持って、自分の1票が世の中を変えるという信念を持つことが大事だと思う。とにかく法律を変えるっていうことは非常に大事。

田嶋 陽子(たじま・ようこ)
女性学研究者

元法政大学教授。元参議院議員。英文学・女性学研究者。書アート作家。シャンソン歌手。女性学の第一人者として、またオピニオンリーダーとしてマスコミでも活躍。津田塾大学大学院博士課程修了。イギリスに2度留学。『愛という名の支配』『ヒロインはなぜ殺されるのか』『我が人生歌曲』など著書多数。